MBCCを含む国際コーチング連盟の承認コースが大きな転換点にきています。2027年からは、これまでMBCCでもコースに組み込んできた「修了技能審査」がなくなります。そして新たにICFがformative evaluation(形成的評価)と呼ぶプロセスが導入されます。一つの録音で技能レベルの合否を判断する方式から、技能の開発プロセスを継続的にフォローしていくことで、要求されるコーチング技能の再現性を評価していく方式に変わるのです。
この変化をお伝えすることと合わせて、伊藤真紀さんが書いてくれた『MBCC基礎エッセンシャルズ19期終了レポート』へのアンサーソングとして、このコラムを書いています。
真紀さんのレポートはこちら
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まず真紀さんが後半に書いているこのメッセージ・・・
< 私自身も卒業したこのプログラムが、この期をもって一つの大きな区切りを迎えることもあり、なんともいえぬ名残惜しさが胸に広がります。>
についての、私からのアンサー。
たしかに、大きな区切りです。しかしそれと同時に、ほんらいMBCCが目指している道を、さらに力強く進んでいくための契機だととらえています。
なぜならば、ICFが意図する見直しの眼目は、「コーチング技能の定着度を精査すること」だからです。
一発勝負の修了技能審査の課題は従来から私も感じてきたことで、グローバルで議論されていました。また生成AIを使った不正など将来的に審査を阻害することへの懸念も指摘されていました。
一方でMBCCでは、一貫して一人一人の技能の再現性に目を向けてきたという自負があります。審査方式はICFのルールに合わせなければならないが、もっとも重要なことは、「この録音で実践できたことが、他のセッションでも再現できる可能性」を、コーチのクライアントへの関わり方、クライアントの特性をふまえて吟味する。これを軽視したことは一度もありません。
そのためLevel1の審査(ACC水準)でもLevel2の審査(PCC水準)でも、合格した人へのフィードバックシートに、「できたこと」以上に「開発課題」をてんこ盛りにしたことが山ほどあります。ここ数年ずっと、応用コースのフィードバックと結果報告をまとめて事務局に共有するのは、イブの徹夜を潜り抜けたクリスマスの日の早朝でした。
だからICFがコーチングの再現性を精査するための見直しを決めたことは、私たちが取り組んできたこと、その背景にある課題について彼らが共通認識を持っていることの証と受け取っています。
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ふたたび、真紀さんのレポートにもどります。
< オンラインの実習で、「いってらっしゃい」と実践の部屋に送るたび、ある種、道場のような修行の場へ送り出すような気持ちになります。>
同じことを経験してきた真紀さんだからこそ出てくる言葉でしょう。これは理屈ではなく感覚の話ですが、ブレークアウトルームを作成して受講メンバーを送り出す瞬間の思い、実践を終えてメインルームに戻ってくるのを迎える瞬間の思い、こういうことが場を形成していくのではないでしょうか。
MBCCはプロコーチや講座のファシリテーションに慣れている人を、外部から迎えたことがありません。全員がMBCC生え抜きです。それは排外主義ではけっしてなく(私自身の活動では、気候コーチングなど多様なMBCC外のプロフェッショナルとコラボしています)、学びは文化に支えられると思っているからです。
受講メンバーを“道場”のようなブレークアウトルームに送り出す真紀さんは、こうも書いています。
< しかし、どんなにコーチングの理論やコアコンピテンシー、倫理規定を読み込んでも、実践なしにはコーチングは身につきません。>
さらに、
< 基礎エッセンシャルズ・実践クラスは、マインドフルコーチングの文字通り実践の場です。これまで頭で学んできたことを、今度は実際に「やってみる」。
そして、これがおどろくほど難しい。
ほどなくして受講生は、「わかる」と「できる」はこうも違うものかと気づいていきます。>
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「わかる」と「できる」のギャップを小さくできたら、すぐに達成感を持つことができて、学び続ける意欲も持続させやすいでしょう。
それは断じてコーチングの本質ではないけれど、「コーチング」教育の手法として、そうすることは可能です。私たちがやっていないだけです。では、どうすれば可能か。
こんなふうに質問してゴール設定しましょう、次はこう質問して現状を確認しましょう、それができたら今度は行動のアイディアを引き出すために、こんな質問をしてみましょう・・・。
でも、結局は社会で役に立たない。再現性がない。そもそも今はAIで事足りる。
だから、難しいのは承知のうえで「わかる」と「できる」を、ほんらいあるがままにしておく(結果、そのギャップは大きい)。
これが、私たちの文化です。
物事の道理に沿ってギャップをあるがままに“道場”に向かう。真紀さんは、次のようにつづけます。
< いまどきは、なんでも答えらしきものがインスタントに与えられる時代です。
そんな早いときの流れのなかで、大の大人が、人前で、学んだことをいざやろうとして「できない」。
これは、なかなかこたえる経験です。>
まったく、そのとおり。
で、大事なことは、こういう質感のなかで磨き上げられたものが、それぞれのコーチング、それぞれのコーチ像となっていく、ということです。
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インスタントな「コーチング」の蔓延、そのリスクに関しては、先日、英語のコーチング倫理マガジンETHICAL EDGE Insights に「火曜サスペンスドラマ」のようなタイトルで書いたので、ぜひ読んでみてください。(最新号 VOICES OF ASIA)

真紀さんが書いている以下のところが、100年後の世界にコーチングを人間の叡智として遺していく鍵ではないかと思います。
< マインドフルコーチングを学び、瞑想などを通して、評価や判断をせずにありのままを受け取る訓練は、コーチングのその瞬間だけにとどまりません。
それは、ありふれた日常のなかにその機会を見つけ、自分の生活に息づき、そして人生そのものへと広がっていくのです。>
「コーチングのスキルを習得する」という目的が、あなたのキャリアにおける一つの目標なのか。そうではなく、人間としての全存在を磨いていく道に包含していくものなのか。後者でなければほんとうの意味でコーチングを磨くことはできないというのが、MBCCの文化です。
4月24日に開催した【世界基準で問い直すコーチングの倫理】において、Wendy-Ann Smithが私たちに問いかけた倫理の実践も、このことと軌を一にするものでした。※アーカイブ購入可能です
< そしてやがて、マインドフルコーチングというひとつの技術の習得というものは、単なるスキルアップにとどまらず、いつしか自分の存在そのもの、自分自身の変容につながっていたのだ、と、気づくときがくるのでしょう。>
MBCCは、初心の眼=ビギナーズマインドとともに。
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