1on1の失敗とコーチングへの誤解 (2)
先週は1on1を実施する職場は増えているが、必ずしもうまくいっていない…という実態を紹介しました。(前回の記事はこちら)
まず直感的な話をすると、そもそも1on1を成功させたい企業はコーチング教育にも関心を持つ可能性が高いと思います。
実際に1on1という言葉を日本で広げた代表的企業の一つであるヤフー(現在のLINEヤフー)は、1on1推進の一環としてコーチング教育に力を入れてきたことでも知られています。
残念ながら日本に客観的に信頼性の高いコーチング市場に関する調査が見当たらないので、ICFのグローバルスタディから推察してみます。
まず「コーチングの資格(ICF認定)を持つコーチの数」は、日本国内に1,532名と報告されています。
資格保有者は2019年比で約2.9倍に達しており、少なくとも個人のコーチング学習市場が成長しつづけていることはわかります。
この数字と企業におけるコーチング教育を直接つなげることはできないので、いわゆる「コーチング研修」が含まれている研修サービス市場を押さえると、2024年度の5,858億円(前年比4.6%増)から2025年度は6,130億円(同じく前年比4.6%増)と、堅実に伸びています( 矢野経済研究所調べ)。
「人的資本経営に取り組む企業の増加により、こうした企業の教育投資は拡大見込み」(同研究所)。
冒頭の直感的な話と市場の動きは、控えめに言っても逆方向を向いていることはないでしょう。
まとめると、1on1を取り入れる職場の増加は、ある程度はコーチング教育の導入と軌を一にして進んでいると考えられます。
そうするとやはり問題は、1on1の成果を上げるために職場のコーチング教育が十分な役割をはたしていないのではないか、というところに行き着きます。
できるかぎり事実を共有するために回り道をしましたが、ここからは断片的だがリアルな事象と生の声をもとに問題提起をしていきます。
コロナ禍を経てのオンライン学習の日常化、ニワトリとタマゴの関係になりがちな労働力不足と働き方改革など複数の要因を背景に、研修に割く時間は短縮化される傾向にあります。
これは市場拡大と矛盾するようですが事実です。
そのような状況で提供されるコーチング研修は、本質が抜け落ちた会話のテンプレートになっている印象があります。
コーチングをテンプレート上のパターン化された会話だと誤解した上司は、その慣れない道具を使うことに意識が行きます。
人間の注意の働きはシングルタスクなので、こうなると会話の相手である部下に注意は向きません。
この状態でも上司に信頼を寄せてオープンマインドで話してくれる部下がいたら、それはもともとコーチングだろうがティーチングだろうが機能する信頼関係があるからです。
コーチングが何であるかを取り違えたまま簡単に職場に入れることで、結局はうまくいかず頓挫してしまう。聞く限りにおいては、そんなケースが少なくないようです。
次回は、1on1を実りあるものにするために、勘違いされたままの「コーチング」の衣をはがして、何が本当に役に立つかを明らかにしていきます。
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