1on1の失敗とコーチングへの誤解 (3)

vol.171(2026年6月2日配信)

大手企業を中心に増えている上司と部下の1on1、それと連動するかのようにコーチング教育への関心の高さも堅調。
ところが調査によると1on1がうまくいかないという声は多く、「コーチング」は役に立っていないのではないか。
いや、じつは「コーチング」のとらえ方自体が間違っている・・・。
これが本連載でお伝えしてきたことです。

さらに・・・。じゃあ何が間違っているの?
そもそもコーチングを一定の方向づけられたテンプレートのような会話だと思ってスキルを使う、それを1on1の参考にする・・・それが完全な取り違えだということも強調しました。(前回の記事はこちら。1回目は こちらからお読みいただけます)

日本を含む非英語圏では、コーチングを単に対話モデルとして教えたり学ぶ傾向があります。
しかし対話モデルはコーチングを意図した対話を成立させるための足場であって、コーチングの対話そのものではありません。

たとえば、いちばん有名なGROW(Goals/Reality/Options/Will)モデルの背景には、ロジャーズやマズローらによる人間性心理学、デシとライアンの自己決定理論、ガルウェイのインナーゲーム理論など、多くの基礎理論やメソドロジー(原理に沿った方法論)があります。
理論と現場での実践の間には距離があり、それを埋めるツールとしてモデルが存在します。

GROWを普及させたプロフェッショナルコーチのパイオニア Sir John Whitmore
(ジョン・ウィットモア)は、「どんな独裁者でもGROWモデルを使える」と語っています。
それ自体がコーチングではないのだという意味を、ここから私たちは汲み取らなければなりません。


ここで本連載の出発点にもどって、そもそも何のための1on1なのかを確認してみましょう。
JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)のウェブサイトには、「部下の成長を促すこと」と「組織力を高めること」とあります。
パーソル総合研究所のウェブサイトにも、全く同じ2つの目的が上がっていました。

上司との信頼関係はエンゲージメント(組織との一体感、帰属意識)につながるという研究は多々あるので、単に部下の成長にとどまらず組織力という目的にも合理性があると思います。


成長を促し組織力を高める1on1を実現するためには、コーチングのスキル以前の前提に立ち戻る必要があります。
何がコーチングの効果を上げているのかを事実ベースで見つめ直すことです。

さまざまな心理療法のエビデンス研究に倣ったコーチングの効果性に関する研究で明らかになっているのは、コーチとクライアントの関係性(Working alliance)こそが、あらゆる手法の効果を左右する主要因だということです。
対話モデルを使い慣れていて単に自分のパフォーマンスを示したい上司よりも、対話モデルは知らないが部下と腹を割って話し合える上司のほうが、コーチングを意図した対話を促進できる可能性が高いのです。


では一体どうやって部下と腹を割って話し合える関係を築くか。

次回は最終回、これだけ徹底していけば必ず突破口が開けるというコーチングの本質に入っていきます。



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