質問リストに逃げていないか

vol.178(2026年8月21日配信)

「私、運動したいのだけど続かないんですよね。どうやったら続けられるか考えてみたいです」

あるクライアントがコーチに伝えるところから会話が始まりました。

その後、「仕事が忙しいと、疲れているから今日はいいか・・・とやめてしまう」とか、「週末ぐったりして昼まで寝てしまうと自己嫌悪になって、モヤモヤしたまま気づいたら夕方・・・」といった話をクライアントはします。

そんな会話が始まってから3分後くらいに、コーチは「そんなとき〇〇さんのなかで、どんな感情が立ち上がってきますか」と問いかけます。そうするとクライアントは、ついさっき言った「モヤモヤ」を繰り返しながら、できない理由と状況説明を続けて6分くらいが経過します。

クライアントの話が収束したところでコーチが問いかけます。「〇〇さん、ここまで話してみて、どんなことに気づいていますか」

そうするとクライアントは、もとから認識していたであろう「運動をしたいけど続かない状況」の説明を繰り返します。

感情を探求することも、セッションの途中で会話を俯瞰する投げかけをすることも、よくプロのコーチがしていることです。フレーズだけを抜き出してテキストとしてみたら、いい質問に思えるかもしれません。

しかしコーチは質問のフレーズによってプロフェッショナルの仕事を体現しているのではありません。その問いが現れるのを待っていたかのように、機が熟する瞬間があります。そのタイミングを掴んで投げかけることでプロの質問になります。

迷走感ただよう会話のなかで、コーチングを学んでいる人から「頭が真っ白になって質問が出てこなくなった」という話を聞くことがあります。しかし質問を覚えてリスト化すると、そういう不快な経験を避けることができます。すると何となくコーチングができるようになった気がする。ここに罠があります。

目の前にいるクライアントをどう支援すればいいか分からくなる瞬間。それは誰もが経験することです。そのとき自分の身体がどう反応しているかに気づいてクライアントとともにいるか。それとも反射的に質問リストに逃げ込むか。

クライアントに投げかけるための質問のフレーズは、短期集中学習である程度覚えることができるでしょう。しかし頭真っ白の兆候に気づき、刺激と反応の間にスペースをつくり、クライアントと協力して問いを迎え入れるコーチのマインドセットは、促成栽培で生まれるものではありません。

質問リストに逃げていないか。コーチングに疑問を感じたり、行き詰まったときには、そのように自分に問いかけてみるのもいいかもしれません。


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