悔しい逆転負けで終わった日本代表のW杯。かねてから名匠とされるブラジル代表のアンチェロッティ監督の采配を称える声が多いようです。

後半ブラジルは前半のコンパクトに守る日本の守備を崩せずカウンターで先制されたのを受け、大きく布陣を変えて違う攻め方をしてきました。それについて私が書いても単に一ファンの感想文にすぎないので、ここでは省略します。私が書けるのはビジネスのリーダーシップ、組織論から見て何が言えるか、ということです。

物事が想定どおりに進まないとき、さまざまなプラン変更を考えるのはリーダーとして普通のことです。状況が厳しいほど、抜本的な見直しも視野に入れます。リーダーのコーチング、組織づくりにおけるアジェンダとして珍しくありません。

しかし大胆な変更であるほど現場が理解できない、理解できても対応しきれないこともリーダーの脳裏をよぎります。組織は最終責任を背負い常にゼロイチのマインドを携えて仕事をするリーダーと、決まり事や自分の役割に駆動されるメンバーの落差に直面して停滞することがあります。正解がないなかで生きるマインドセットと、正解があることを前提にするマインドセットの落差を埋めるのは容易ではありません。

だから多くの場合、プランはあっても実行できるとはかぎりません。正解がない局面で熟慮している猶予もなく、それでも舵取りを大きく変えて結果を出さなければならない。これはどんなビジネス、どんな組織でも極めて難易度が高いです。アンチェロッティの決断と実行が成功につながったことは、その意図を汲んでリスクを共有し、急な見直しに対応しきった選手たちの能力なしに語れません。

状況が目まぐるしく変わる複雑な環境がビジネスのデフォルトだとすれば、それに対処する内部システム(企業など)には、外部環境と同等以上の複雑さを取り込んだ多様性が必要になります(アシュビーの法則=必要多様性の法則)。

私は森保監督の采配も、リスクを背負ってプラン変更を試みていたと思います(ちょっと感想を言ってしまいました)。これは内部の多様性を活かそうとしたという意味においては、アンチェロッティと同じ判断ロジックともいえるでしょう。

ネットなどで「監督の差だ」と批判する声もあるようですが、たとえば、もしも日本が守り切ってPK戦で勝ったら、森保監督の采配は何と言われたでしょうか。

結果バイアス(結果とプロセスを切り分けずに、結果だけを見て認知を歪めてしまう)は、ポジティブな評価においてもネガティブな評価においても、組織的な判断に大きな影響を及ぼします。そして残念ながら人事評価などにおいても、よくあることです。

最後に。

ギリギリの極限で生きている人が見ている世界は、それを経験している人にしか分からないと思います。

そのことにリスペクトをもって、これからも日本代表を応援していきたいと思います。やっぱりサッカーの話になってしまいました。

(MBCCファウンダー 吉田典生)

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