変革はトップダウンでなければ遂行できないのか、ボトムアップがあればこそ成功するのか。常に見解の分かれるところです。

『学習する組織』の提唱者であるピーター・センゲ博士(MITスローン校上級講師)は、著書のなかで「組織変革はトップからも、ミドルからも、ボトムからも起きうる」ことを、それぞれの実例と共に示しています。

この話の本質は、組織変革の主体がシステムであるということです。トップダウンが功を奏するのではなく(ミドルアップでも、ボトムアップでもなく)、どこが起点になるにせよ、それが情報の流れを変え、硬直化していたルールが見直され、現場の働き方が変わり、小さなチームの連携が芽生えてくる。

そんなふうに組織を構成しているシステムが動き出すことで、いつしか可視化できる結果が現れてきます。その結果を後から見て、人々は“変革”と結論づけます。

変革を成し遂げたいけれど苦労している組織の当事者は、どうすれば、あの会社のように上手くできるだろうか・・・と答えを探します。

ふつう人は分かりやすい答えを求めるので、特定のリーダーが導いたサクセスストーリーや、現場が結束して幹部を動かしたサクセスストーリーなど、ハッピーエンドの物語が伝えられます。

人の心を打つ話というのは、想像を超えた努力や奇跡的な連携、尽きない情熱と不断の努力といった構成要素から、ヒーロー&ヒロインをつくりだします。それは物語として共感を呼び感動をもたらすけれど、これで本は売れても他社(他者)への波及効果はありません。

それは、なぜか。

私たちが大谷選手をみて感動し、勇気をもらうのと同じように、「自分にはできないことをあの人がやってくれている」という認知をもたらすからです。

夢を他者に投影するのです。

トップアスリートを見て喜ぶのはいいけれど、会社は別問題です。そして社会も別問題です。

ここからは気候危機の話です。

沸騰する災害指定レベルの猛暑のなか、温暖化対策の話をすると「もう無理じゃない?」という諦めの声が聞こえてきます。

「だって、自分にできることはなさそうだから」

それは間違っていません。「自分」にできることなど、たしかにありません。

そもそも、よく行政やメディアが言う「ひとりひとりにできることを」というメッセージ自体がまちがっています。

エコバックを使ったり家のエアコンの温度調節を心がけたりしても、気候危機を食い止めることは不可能です。

なぜならば、気候危機をもたらしている主体はシステムだからです。

それは拡大再生産が自己目的化している現在の資本主義であり、四半期ベースで成果を示さねばならない経営体制であり、その短期的な利益誘導を前提とする政官財の癒着構造であり、目先の業績を上げる人が持ち上げられる評価制度です。

それらこれらが絡まり合ったシステムこそが、かけがえのないたった一つの地球を狂わせようとしている主体です。

なにか悪いことをしていたとしても(たとえば燃費の悪い大型SUVに乗っている)、せいぜい、小学生が「ごめんなさい、先生がいなかったのでトイレのスリッパに履き替えないで、おしっこしちゃいました」くらいなものです。そんなこと、学級崩壊になんら影響しないのと同じです。

だから私たちに求められるのは、システムとは何かを理解することです。そしてシステムと私の関係を理解することです。

一例をあげます。

たくさんCO2を排出する企業に融資しているA銀行と、脱炭素に取り組む企業に対し優先的に融資しているB銀行があるとします。そして、それぞれの銀行の融資に関する方針がわかりやすく情報公開されているとします。

さらに政府は情報にもとづいて、消費者に対してB銀行の活用を推奨するとします。

ここには複数の大事なシステムの構成要素があります。炭素税の導入、ディスクローズの法制化、行政における啓蒙体制。

なにも悪いことをしていない私たちは、システムが変わることによって、良いことをする当事者になります。

それはやっぱり私たちが当事者だから?けっきょく私たちが決意して行動しないとダメということではないの?

ちがいます。

私たちは、単にシステムの一部だということです。

気候危機へのアクションは他人事でよいです。だって悪いのはシステムだから。

でも、これだけは理解しておく必要があります。

システムが悪いせいで、私たちの食糧不安が高まり、エネルギー不安が高まり、経済は不安定化し、さらにそれが子どもたちの世代を襲うのです。

これは科学的な帰結です。

だからシステムを変えましょう。

次のことをのぞけば、あとは何の努力も必要ないです。

地元の政治家の事務所に行く。それが億劫ならメールや手紙を通して、システムを変えろと声を上げる。それだけ。それをつづけながら、SNSでつながるだけ。

あえて言いますが、国会を囲んだデモなど役に立ちません。選挙の票に影響しないし、なんか怖い人たちのように見られ世間から距離をおかれるリスクもあるからです。正直なところデモは否定したくないのですが、もっとしたたかな作戦を練ろうと言っているのです。

うちの町、こんなに暑くなって地元の工務店は仕事もできない。高齢化も手伝い宅配のドライバーも危険だ、なにより子どもたちの健康どうするよ。学校帰りの子どもたち見て、心配になるぜ。

だから、もういい加減、システムを変えましょう。地元で、そう言うだけでいいのです。

私たちには、システムを変えようとする政治、政治家を選ぶ選択肢が必要です。

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東京都心の川べりを歩きながら地球46億年の歴史を体感

未来世代にのこす地球を語り合う”Deep Time Walk”

8月9日 17時 竜閑さくら橋街角広場集合(大手町プレイス隣)

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