Mindfulness Based Coach Camp マインドフルネス

マインドフルネスの実践者に聞いた「習慣化」のコツ

今村佳未 投稿者:今村佳未 カテゴリー:コラムマインドフルネス

「心の筋トレ」とも言われる「マインドフルネス」。

 

「心の筋トレ」とも言われる「マインドフルネス」。

マインドフルネスについて経験や知識が無いとしても、「心」をトレーニングすることで、日々の「在り方」や「感情面」にポジティブな影響がありそう、というイメージはしやすいのではないでしょうか。

 

Mindfulness is a way of befriending ourselves and our experience.”  Jon Kabat-Zinn

(マインドフルネスは、自分自身と自分の経験を仲良くする方法です。ジョン・カバットジン

 

私自身は、マインドフルネスについて知れば知るほど、時空を超えて、いかなる人生の場面でも「最善の私」になることを手助けしてくれる強い味方であり、それはまさに「人類の叡智」だと感じて止みません。

これまでの研究によれば、マインドフルネスは集中力を高める・ストレスに強くなる・EQ(心の知能指数)の向上・自己認識を高める・怒りのコントロール・睡眠の質を高めるなど、その影響はとても広範囲に及ぶ可能性が報告されています。

生活やビジネスのあらゆるシーンをより快適に、穏やかに、ポジティブに、そしてクリエイティブにしてくれることへの期待が、既に数々の研究からはうかがえます。

その気になれば誰でも、どこにいても実践できるマインドフルネスですが、実際に日常生活に取り入れ、その恩恵を継続的に実感している人はまだまだほんの一握り。既にマインドフルネスを実践している方も、これから試される方も、その恩恵を充分に受け続ける為には、マインドフルネスについて正しく理解し、自分に合った方法で習慣化していくことが重要だと考えます。

本コラムでは、マインドフルネスの習慣化のヒントを紹介すると共に、MBCCコーチ陣のマインドフルネスの実践の様子・効果など生の声をお届けします。

 さて、本題に入る前に「マインドフルネス」の基本的なところを、確認しておきましょう。(既にご存知の方は、先に進んでください。)

 

基本知識 ➀「マインドフルネス」とは?

「マインドフルネス」とは?

 

マインドフルネスとは「今この瞬間に注意を留めること、それによって生まれてくる明晰な気づきの状態」を表します。

 人間は起きている時間のうち、なんと約47%の時間は“mind wandering”(マインドワンダリング)の状態にあり、未来や過去を考え、意識がここになくさまよっているそうです。

マインドフルネスにより意図的に注意を“今この瞬間”に戻し、その注意を留めることで、注意の安定化や制御に関わる脳の神経回路を強化できるのではないか。近年の認知神経科学の研究では、アカデミックな基準においても信頼度の高い論文がいくつも紹介されています。

代表的なトレーニング方法としては、呼吸に意識を向ける「呼吸瞑想」、身体の各部分の感覚をありのままに観察していく「ボディスキャン」、注意の対象を限定しない「観察瞑想」などがあります。また、一般的な瞑想のイメージとは少し異なる「食べる瞑想」「歩く瞑想」、ジャーナリングと呼ばれる通称「書く瞑想」もあり、日常の様々なシーンで実践することが可能です。

 

基本知識② 「マインドフルネス」の歴史

 

昨今、「マインドフルネス」という言葉は、身近なシーンでも聞くようになりましたが、その源流は上座部仏教や禅の教えと実践にあります。したがって日本には1500年以上も前からその考え方はあったわけです。しかし、1960年代にアメリカで仏教の教えが広まるまでは、一般的なものではありませんでした。

 宗教の世界から世俗の世界へとマインドフルネスが拡がるきっかけは、アメリカ西海岸を中心にしたヒッピームーブメントでした。アップル社の創業者である故スティーブ・ジョブズ氏が禅に傾倒していたことは有名です。

そして、70 年代後半になると、マサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士により、西洋医療では解決できない問題に対しMBSRMindfulness-based stress reduction:マインドフルネスストレス低減法)という瞑想中心のプログラムが開発され、精神医療の場でマインドフルネスが取り入れられるようになりました。

これが宗教色を弱め、科学のエビデンスにもとづいた実践としてのマインドフルネスを普及させる大きな転換点となったようです。

 

認知神経科学からのマインドフルネス研究が進む

 

2000年代に入り、認知神経科学からのマインドフルネス研究が進むのと並行して、ビジネスやスポーツなどのフィールドでもマインドフルネスへの注目が高まりました。2007年にGoogle(グーグル)がマインドフルネスを取り入れた講座を社内研修として開発したことは世界中で話題となり、多くの企業が今でもそれに続いています。

スポーツ界では、NBAで活躍したマイケル・ジョーダン選手やテニス界のジョコビッチ選手もマインドフルネスや瞑想を取り入れました。2014年には、米国のニュース雑誌「TIME」が、The Mindful Revolution でマインドフルネス特集を組み、これも大きな話題となり、その後、数々の雑誌や書籍、メディアで取り上げられるようになります。

現在の「マインドフルネス」は宗教と一線を画した世俗での実践と、宗教の教えを意識しながら世俗に融合させるアプローチ、そして世俗とは区別された宗教的な実践というように大別できるかもしれません。

 

マインドフルネスを習慣化する方法

マインドフルネスを習慣化する方法

 

「マインドフルネス」を実践してみたものの、「3日坊主で終わった・・・」、「時間が取れない」、「効果が感じられない」などの理由で、なかなか続かない場合はどうしたら良いでしょうか?

 マインドルネスの取り入れ方は沢山ありますが、まずは「自分に合った方法」を自分軸で選択することだと考えます。自分の生活スタイルや好みに合わせ、一番実践しやすい方法で、例え5分、10分であっても「毎日継続」していける方法を探してみましょう。

 ここでは、20年以上の瞑想の実践者やMBCCコーチ陣が、どうマインドフルネスを実践し継続してきたのか、効果やコツなどをご紹介します。

 

ビルク氏の考えるマインドフルネスを習慣化する「4つの方法」とは・・・

マインドフルネスを習慣に変える4つの方法

 

マインドフルネスを習慣に変える4つの方法(※以下「4つの方法」、Harvard Business Review2021 1月掲載)では、20年以上にわたる瞑想の実践者、マティアス・ビルク(Matthias Birk)氏が習慣化する為の4つの方法を紹介しています。

ビルク氏は、コロンビア大学ビジネススクールのエグゼクティブプログラムおよびニューヨーク大学の非常勤教授として、瞑想とリーダーシップを教えています。アマゾン・ドットコム、ゴールドマン・サックス、グーグル、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ラルフ ローレンなどのグローバル企業や国際連合でも、エグゼクティブに指導した経験を持っています。

 

➀コミュニティを見つける

瞑想アプリなどの普及により、一人で手軽にマインドフルネス瞑想をすることもできます。しかし、アプリでは得られない「継続」する為の2つのメリットが「コミュニティ」にはあります。

  1. 出席の責務がうまれる
    特定の日時に集まるため、出席の責任がうまれ、より継続に繋がる。
  2. 社会的支援が受けられる
    指導者や他の参加者に触発される。有益な知識や情報を得る。
    自分の課題などを他者と共有できる。

     

    ②瞑想する時間は譲れないとコミットする

    コミュニティに参加するのとは別で、日々の実践時間を確保することも不可欠である。

    職場で実践できる環境であれば、カレンダーをブロックするなどして時間を予め確保し、チームにもその事が分かるようにしておくと「理解」というサポートも受けやすいでしょう。

    家庭で行う場合も、家族に実践時間などを共有しておくと、よりスムーズにできるかもしれません。

    いずれにしても、しっかりと周囲に「コミット」しておくことが重要です。

     

    ③指導者に教えを仰ぐ

    “たいていのスキルと同じく、ある程度のレベルに到達するために師の教えを仰ぐことは有益である。ゴルフやピアノの基礎を自力で学ぶことはできるかもしれないが、スイングを見てくれるコーチや、楽譜の読み方を教えてくれたり、個別にフィードバックを与えてくれたりするインストラクターがいたほうが早く上達する。” (” 4つの方法“ より抜粋)

     

    瞑想も他のスキルと同じく、ある程度の正しい知識とフィードバックや助言が必要です。しかし、良い「指導者」を見つける際に、どんな指導者なのかは調べる必要があります。中には数カ月の訓練しか受けていない講師(自称)もいますので、指導者の経験や知識などは必ず確認した方が良いでしょう。

     

    ④線形に進歩するという幻想を捨てる

    誰もが瞑想の何らかのメリットを得たいと思い実践しています。しかし、瞑想後の心の静けさや爽快な気分などを求めていたとしても、毎回期待通りの変化がない時もあります。場合によっては、瞑想により心にスペースが出来たことで、逆にネガティブな考えが現れることもあります。

     

    “そのような時は、自分が正しい方向に進んでいる兆候だと考えるとよい。あなたは心を鎮めるプロセスを学んでいて、「トレーニング」が精神的な痛みをつくり出しているのだ。このトレーニングを続けられれば、長期的には精神的な筋力の増強につながる。4つの方法より抜粋)

     

    MBCCコーチ達のマインドフルネス

    マインドフルネスの実践を通して、どんな「効果」を感じているのか

     

    では、MBCCコーチ陣は、マインドフルネスの実践を通して、どんな「効果」を感じているのでしょうか。そして、継続のコツは?(敬称略、順不同)

     

    吉田典生(MBCC®ファウンダー, MCC

    マインドフルネス経験年数

    10(但し、マインドフルネスという概念を得る前の様々な瞑想は30)

    実践頻度

    130分~45

    実感している効果

    以前からしていた瞑想と比べて特に感じるのは、自我と距離をおけるようになったこと

    継続のコツ

    ・歯磨きのような日常になるまでは“タスク“としてやる根性。

    ・認識できる“成果“がわからなくても、気づかない領域で変化は起きているものだと信じること(藤田一照さんからの助言)

    伝えたいこと

    目的は実践のドライブにもなればエゴの肥大化にもつながるので、無理せず気軽にやればよいと思います。また瞑想という意味での“マインドフルネス“だけが気づきを耕す方法ではないと思います。他者の“マインドフルネス“と比較せず自分の道を!

     

    松川美保(MBCC® ディレクター/シニアコーチ/シニアトレーナー、PCC

    マインドフルネス経験年数

    6

    実践頻度

    平均して1日40分程

    実感している効果

    ・体内時計が調う。心にゆとりが生まれ心身共にニュートラルな状態を維持することができる。それにより、人や物事に丁寧に関わることができ、より良い意思決定に繋がっている気がする。

    ・難しい局面での行動の選択がうまくできるようになってきている。大きな感情の変化が生じた時にその場で認知し必要な状態に切り替えることができてきている。

    ・共感力の向上。解決することを急がず、一旦保留することの心地悪さが心地よくなってきている。ありのままを否定、肯定することなく受け容れられる頻度が増えている。

    ・必要以上に心配したり、不安になったりしなくなった。自分のほどよい感覚がわかるようになってきた。

     

    継続のコツ

    ・好きなものに触れながら実践する。(私の場合は、自然の営みに五感を傾ける⦅波の音、鳥や虫の鳴き声、雲の動き、影の形、自分の心身の変化⦆、料理、散歩)

    ・身体が喜ぶことをする(朝一杯のレモン水を丁寧に飲む、寝る前のボディスキャン)

     

    上田知世(MBCC® コーチ/学習グループコーチ/PCC

    マインドフルネス経験年数

    6

    実践頻度

    120分(朝10分、夜10分)

    実感している効果

    ・俯瞰的に物事を捉える力。(物事を主観的に見る傾向にあったのですが、マインドフルネスの実践で客観的に観察する力が養われ、一歩引いた視点から広く物事を捉えられるようになった)

    ・自己管理(セルフマネジメント)力の向上。(マインドフルネスを通して「自己パターンの認識」ができるようになり、自分の感情や行動を目的に応じて適切に活用できるようになった)

    継続のコツ

    朝のルーティーン化(毎朝、仕事を始める前にお香を焚いてマインドフルネス瞑想をするのですが、好きなお香を炊くことで瞑想の時間がより楽しみになりました。)

    伝えたいこと

    私自身、無理をしても続かなかったので、例えば、好きな場所、好きなイスや座布団、香り、音楽、など、五感が喜ぶものを取り入れることで、楽しみながら続けていただければ嬉しいです。

     

    1日10分のマインドフルネスを「継続」してみる

    1日10分のマインドフルネスを「継続」してみる

     

    「継続」がネックになっている方は、一番小さなベイビーステップからスタートしてみましょう。

    時間が無ければ、1日「5分」や「10分」の短い時間から始めてみる。自分に合った方法が分からないのであれば、暫くの期間は色々あるマインドフルネス実践法を試してみるのもいいと思います。

     MBCCでも毎月瞑想会(無料)を開催しています。

    ※詳細はMBCCホームページのイベント情報 に掲載しています。次回は88日(月)の20時からです。

    すぐにでも試してみたい方は、【マインドフルネス瞑想入門】初めての瞑想前に見たいおすすめ動画(約15分の動画の最後3分程で瞑想ガイドがあります)もとてもお勧めです。リサーチすれば、出来ることは沢山ありますね。

    私自身も、15年程前にヨガを通した呼吸瞑想に始まり、マインドフルネスを意識した食べる瞑想、書く瞑想(ジャーナリング)、マントラ瞑想など、いろいろと試してきました。どれも大好きですが、私にとって継続しやすいのは「呼吸瞑想」です。

    朝起きてすぐに、ゆっくりと深呼吸をして瞑想をスタート

     

    朝起きてすぐに、ゆっくりと深呼吸をして瞑想をスタートし、空気が鼻の奥の方を入ったり出たりする、温度や香りをただ観察していきます。その瞬間の感覚を受け取り、また次の瞬間の感覚を受け取る。忙しい朝は、5分程でも頭がスッキリし1日をスタートする「心地良さ」を体感でき、モチベーションにもなります。

    この「心地良さ」が手に入りやすくなってからは、集中力が無いと感じた時や感情的になった時など、色々な場面で「呼吸瞑想」を実践するようになりました。そのことで、感情にふりまわされていた自分に気づくことも増えてきました。無意識レベルで起こって過ぎていたことに、その最中に気づけるようになったことは、私にとってはとても大きな効果だと思います。

     「効果」の感じ方には、もちろん個人差があります。また、無意識レベルでの「効果」はその瞬間は実感できないかもしれません。より多くの方に「効果」を体感して頂きたいと思う一方で、「効果」の大小は、良い悪いというレベルの話ではないとも考えます。効果の大小よりも、「自分と向き合った自分自身」にエールと愛を送り続けて欲しいと願います。

     MBCCリサーチ担当 今村佳未