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コーチング資格を取得すると何が変わるのか?〜ICF認定資格とは〜

今村佳未 投稿者:今村佳未 カテゴリー:コラムコーチングlatest news
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コーチングという職業では、資格の有無について法律的な制約がないため、資格が無くてもコーチとして活動することは可能です。一方で、コーチング資格の取得者は年々増えており、活躍しているコーチ達の多くが何かしらの資格を取得していることが多いようです。

既にコーチングの資格を目指している人も、そうではない人も、コーチングを学んでいるのであれば、ぜひ資格取得によるメリットを知っておいてほしいと思います。なぜならば、資格取得までの過程で得られるものは想像以上の可能性を秘めており、コーチとしての成長に大きな影響を与える貴重なチャンスだからです。最終的にコーチング資格を目指すかどうかは人それぞれですが、正しく検討するための情報は限られているのではないでしょうか。

本コラムでは、「コーチングの資格を取得するとコーチとして何がどう変わるのか?」に焦点を当てながら、国際コーチング連盟(ICF)認定のコーチング資格について基本的な情報や、実際に資格を取得したコーチ達からの生の声をお届けします。

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スティーブン・R・コヴィー(「7つの習慣」著者)

コーチング資格の位置付けは?

さまざまな分野で国内だけでも1000以上の資格があると言われていますが、その信頼性は千差万別です。コーチングにはどんな資格があり、どのような注意点があるかなど、基本的な情報を抑えておきたいと思います。

コーチング資格は「民間資格」なので充分なリサーチを!

資格を大きく分類すると、「国家資格」「公的資格」「民間資格」の3つに分けられます。コーチング資格は、この中では「民間資格」に該当します。では、3つの資格にどんな違いがあるのかを確認しておきます。

  • 「国家資格」
    一般に国の法律に基づいて国や国から委託を受けた機関が管理する資格です。代表的な国家資格には、医師、看護師、弁護士、税理士、公認会計士などがあります。
  • 「公的資格」
    公的資格とは国家資格と民間資格の中間に位置付けられ、民間団体や公益法人が実施し文部科学省や経済産業省などの官庁や大臣が認定する資格です。代表的な公的資格には、英検、日商簿記検定、介護支援専門員、秘書技能検定などがあります。
  • 「民間資格」
    民間資格とは、民間団体や企業、個人等が独自の審査基準を設けて任意で認定する資格です。そのため、とても幅広い分野で民間資格が存在しています。法令による規制が無いこともあり、業界や企業によっては国家資格や公的資格と同様に高い専門性があると認知されている資格から、社会的な評価が殆どされない資格まで様々です。代表的な民間資格には、TOEIC、パソコン検定、MOSなどがあり、コーチングの資格もこちらに分類されます。専門性や信頼性にかなり幅の出る資格であるため、目指す資格として適切なのかは事前に充分なリサーチをすることをお勧めします。

トップレベルのコーチング資格について把握する

コーチングの資格と言っても、専門領域や信頼性、取得にかかる費用や期間は様々です。検索してみれば、すぐに多くのコーチング情報が入手できると思います。それぞれの資格にマッチする目的や需要があるので、ここでは資格の比較は行いません。それよりも、知名度、専門性、組織規模の大きさなどから、コーチングの資格として世界的に最も認知度が高いとされる国際コーチング連盟(ICF)の認定についてご紹介します。

トップレベルのコーチング資格に必要な学習内容、実績、期間、費用、資格更新の有無や条件などを知ることで、他の資格との比較がしやすいのではないでしょうか。念のため明記しておきますが、ICF認定のコーチング資格が誰にとってもベストな選択であると言っているわけではありません。ベストな選択を検討するためにトップレベルの資格について知ることで、一つの目安となるのではないかと考えます。

国際コーチング連盟(ICF)はどんな組織なのか?

国際コーチング連盟(International Coaching Federation/通称ICF)は1995年にアメリカで設立された、コーチング分野における調査・研究、学習、認定資格、社会的活動においてグローバルな影響力をもつ非営利組織です。2024年2月現在、世界166カ国での会員総数は59,754人に達し、拠点は99カ国に広がり143の支部があります。

ICFは単にコーチの資格認定を行っている団体ではありません。世界共通のコーチング学習基準を定め、コーチ養成を行う組織および各組織が提供するプログラムの審査、認定も行っています。

コーチングがビジネスとして拡大し信頼性が問われるようになってきたことから、ICF認定の保有は企業がコーチを雇う際の一つの条件となっているケースも多く見られるようになりました。

ICFが1995年に設立されたとき、その目的は、新たな専門職に信頼性を与え、コーチ同士がつながる場所を提供することでした。その後の25年間で、ICFは専門的なトレーニングを受けたコーチ達の世界最大の組織に成長し、世界のコーチングコミュニティを代表する存在となりました。

2020年、国際コーチ連盟(International Coach Federation)は国際コーチング連盟(International Coaching Federation)と名称を変更しました。これは単なる新しい名称ではなく、コーチ、クライアント、コミュニティ、そして世界にサービスを提供する新しい方法であり、繁栄する社会の不可欠な要素としてのコーチングというビジョンを追求するものでした。

2021年に、ICFブランドとICFエコシステムを発表しました。ICFエコシステムは、コーチング業界の多くの分野におけるICFの関心を反映しており、ICF全体または「1つの」ICF(“One” ICF)は、6つの独自のファミリー組織で構成されています。これはICFの理念の変化の延長線上にあるもので、ICFに関わるすべてのステークホルダーがどのようにICFに関わり、ICFの一部となることができるのかをより明確に示しています。

The ICF Ecosystem – International Coaching Federation より抜粋

ICFエコシステム~6つのファミリー組織~

ICFが繁栄する社会のためのビジョンを掲げ活動していることを示すICFエコシステムについて簡単にご紹介します。前述のとおり、ICF全体または「1つの」ICF(“One” ICF)は、6つのファミリー組織で構成されており、下記が各専門領域になります。

  1. ICF Professional Coaches (ICFプロフェッショナルコーチ):トレーニングを受けたプロのコーチング実践者のための会員組織
  2. ICF Credentials and Standards(ICF の資格と基準):コーチング実践者の資格認定を監督および管理する機関
  3. ICF Coaching Education(ICFコーチング教育):コーチング教育を提供するプロバイダーの認定と承認を監督および管理する機関
  4. ICF Foundation(ICF財団):ICF エコシステムの非営利/慈善活動を行う機関(15年以上前に発足している組織)
  5. ICF Coaching in Organizations(組織におけるICFコーチング):コーチングを導入する企業や組織に特化している機関。組織内での影響力を拡大することで、ICF認定コーチの市場を強化し、コーチングスキルを活用するマネージャーやリーダーに高い基準を設定する先導者となる。
  6. ICF Thought Leadership Institute(ICFソートリーダーシップ研究所):コーチングの未来を創造し、影響を与えることを目標とする組織。イノベーター、研究者、技術者、ベンチャーキャピタリスト、プレス、インフルエンサー間の交流を促進し、コーチングの技術と実践に関する最も包括的で最高品質の知識体系を構築および維持している。

ICF認定のコーチング資格~ACC/PCC/MCC~

ICFの認定資格には3段階(ACC/PCC/MCC)あり、グローバルでは既に5万人以上、日本でも1000人以上のコーチが3つのいずれかの資格を取得しています。

レベルは3段階(ACC、PCC、MCC)ありますが、ICF倫理規定(ICF Code of Ethics)コア・コンピテンシー(プロコーチの能力水準) は共通です。また、最初のレベルであるACC取得時でも、コーチング学習が60時間以上、コーチングの提供も最低100時間必要であることから、ACC取得者もコーチとしての一定以上の総合力を示すことができます。(ただし、コーチング業界の拡大やACC取得者が増えたこともあり、コーチを雇用する際の条件としてPCC以上の資格保有者を対象としているケースも増えてきているようです。)

ICFは、ACC/PCC/MCC資格保有者への継続的な学習を促進しており、3年毎の資格更新時に40時間の継続学習の証明が必要です。

ICF の資格を取得するということは、単にタイトルを獲得するということではなく、継続的な成長と専門能力の開発を意味します。(Getting an ICF credential is not just about having a title, but about continuous growth and professional development)

Demystifying the ICF Credential Journey—ACC, PCC, MCC | InnerLifeSkills より抜粋

ICF認定資格取得時の条件や申請方法は、下記に簡単に記載しておりますが、正式な情報はICFのHP(How to Apply – International Coaching Federation)で確認することができます。また、日本語でより分かりやすく知りたい方は、国際コーチング連盟(ICF)の認定資格取得へのプロセス– MBCCチャンネル YouTubeも参考にして頂けると思います。

ACC(アソシエイト・サーティファイド・コーチ)取得に必要な条件

  • 学習:60時間以上のコーチング教育
  • 経験:100時間以上のコーチング経験(最低8人以上のクライアント、 有料セッション75時間以上)
  • メンターコーチング:10時間のメンターコーチング
  • パフォーマンス評価:提出した録音セッションをICFアセッサーが確認し合否判断
  • 筆記試験:ICF認定資格試験(ICF Credentialing Exam)の合格(ICF倫理規定(ICF Code of Ethics)コア・コンピテンシー(プロコーチの能力水準)、ICFのコーチングの定義への理解と適用能力を確認することを目的とした選択式の筆記テスト)

PCC(プロフェッショナル・サーティファイド・コーチ)取得に必要な条件

  • 学習:125時間以上のコーチング教育
  • 経験:500時間以上のコーチング経験(最低25人以上のクライアント、 有料セッション450時間以上)
  • メンターコーチング:10時間のメンターコーチング
  • パフォーマンス評価:提出した録音セッションをICFアセッサーが確認し合否判断
  • 筆記試験:ICF認定資格試験(ICF Credentialing Exam)の合格(ICF倫理規定(ICF Code of Ethics)コア・コンピテンシー(プロコーチの能力水準)、ICFのコーチングの定義への理解と適用能力を確認することを目的とした選択式の筆記テスト)

MCC(マスター・サーティファイド・コーチ) 取得に必要な条件

  • 学習:200時間以上のコーチング教育
  • 経験:2,500時間以上のコーチング経験(最低35人以上のクライアント、 有料セッション2,250時間以上)
  • メンターコーチング:10時間のメンターコーチング
  • パフォーマンス評価:提出した2つのコーチングセッションの記録(トランスクリプト)をICFアセッサーが確認し合否判断
  • 筆記試験:ICF認定資格試験(ICF Credentialing Exam)の合格(ICF倫理規定(ICF Code of Ethics)コア・コンピテンシー(プロコーチの能力水準)、ICFのコーチングの定義への理解と適用能力を確認することを目的とした選択式の筆記テスト)
  • 申請時点でPCC認定資格を保持している、または過去に保持していたことがある

MBCCはICFの承認を受けたプログラム実施組織として、ACC認定までを対象とするLevel1コース、PCC認定までを対象とするLevel2コースを提供しています。詳細はこちらでご確認下さい。また、無料オンライン説明会も随時開催しています。

ICF認定資格試験への準備について

ACC/PCC/MCC取得における最終テストICF Credentialing Exam (ICF認定資格試験)は、オンラインで受ける筆記試験です。前述のとおり、この試験はICFによるコーチングの定義、ICF倫理規定(ICF Code of Ethics)コア・コンピテンシー(プロコーチの能力水準)などへの理解と適用能力を問うものであり、試験では状況説明文に対して4つの選択肢が提示され、BESTと WORSTをそれぞれ選択します。試験時間は約3時間、設問は合計81項目ありますので、スピーディに状況を理解してICF認定コーチの言動としてBEST とWORSTを選択する必要があります。

テスト内容についての情報は限られていますが、ICF 認定試験の内容ページ(下部)にサンプル問題が掲載されています。受験者は必ず確認しておきましょう。またコア・コンピテンシーに関しては、ICFのYouTubeチャンネルICF Core Competencies (2021) で解説動画を視聴することができます。充分な理解と本質を理解しておくために何度か視聴しておくことをお勧めします。

実際のコーチングの場面では、様々な状況でコーチとしての言動に迷うこともあるのではないでしょうか。ICFのコア・コンピテンシーや倫理規定を十分に理解しておくことは、コーチとして迷った際の指針の一つになります。試験対策を行うのと同時に、コーチとしての基盤強化にもつながるはずです。

MBCCでは、応用コース修了者を対象としたMBCC®探究員制度を設けています。その一つに、コア・コンピテンシーと倫理規定を原文で読み解きながら、コア・コンピテンシーに沿ったコーチングとはどんなものなのか、実践に向けて対話を深め、皆で探究することに取り組んでいる「山田ゼミ」を開催しております。実践にも認定資格試験にも非常に役立ったという声が多いので、対象者は限定されていますがご紹介しました。

ACC取得をしたコーチ達の声

資格取得をしてコーチとして何が変わったのか?ここでは、実際に最近ACCを取得したコーチ達にいくつかの質問をした回答をそのままお届けします。

質問1:資格取得をしたことによるメリットを教えてください。

回答1-1:「自信に繋がった、周りから一目置かれた。」

回答1-2:「資格取得により、国際的に認められたスキルがあるという安心感を、周りの方々にもっていただいていることを実感しています。」

質問2:資格取得をしたことで、コーチとしてどんな変化がありましたか?

回答2-1: 「倫理規定やコア・コンピテンシーへの理解が深まった。結果として自分のコーチとしてのあり方が定まった。」

回答2-2: 「ICFコーチとしての自覚がうまれました。資格取得の過程でコーチングを網羅的に学んだことにより、コーチングで目指すべき方向性をより明確に把握でき、コーチとしての在り方やセッション自体にも良い影響を与えたと思います。」

質問3:資格取得に際し、一番大変だったことは何ですか?

回答3-1: 「PCでの筆記試験。」

回答3-2: 「仕事と家庭の育児・介護と資格取得のための勉強の両立でした。」

問4:これからICF認定資格を目指す方へのアドバイスやメッセージがありましたら、お願いします。

回答4-1:「コーチとしての成長は、学び続けることが大切だと思います。ICF認定資格取得の目標を持ちながら学ぶことは、コーチングに対するより深い理解が得られるだけでなく、日常生活でも役立つ知識やスキルを身につけることにもつながります。目標を達成した際には、人間としての大きな成長と自信につながると思いますので、これを一つのマイルストーンとして、ぜひ積極的にチャレンジしてみてください!」

ACCを取得したことで、自信になり周りからの信頼にもつながっている様子が伺えます。また、コーチとしての基盤、在り方にも良い影響があり、大きな成長にもなったようです。 コーチング資格のファーストステップとして決して簡単ではないACC取得について、そのレベル感や得られるものが分かると、自分が目指すべき資格なのかが見えてくるかもしれません。本コラムではACC取得者の声をお届けしましたが、その先にあるPCCやMCC取得による変化や世界観も気になるとこです。こちらについては、また別の機会にお届けしたいと思います。

理想のコーチ像に近づける選択は?

コーチング資格について少し解像度は上がったでしょうか?
コーチとして活動していく中で、資格のあることはクライアントからの信頼を支え、体系的なスキルを持っていることの一つの証になります。特にご紹介したICFの資格については、求められる学習量や実践時間にはそれなりのボリュームがあります。資格取得の前後を比較すればコーチとして大きな成長を実感している方が多いはずです。(私自身もそう感じています。)

一方、同じ資格を持っていても、コーチとしての信頼や活躍のレベルは様々です。人と人とのコミュニケーションで成り立つコーチングでは、学んだコーチングスキルを全て手放してクライアントと向き合うことが必要な場面も必ず出てきます。コーチとしての成長やスキルアップを望むのであれば、資格取得は大きなステップとなるでしょう。しかし、資格を超えて継続して成長していくマインドや、常にまだ学べることが大いにあるといった「初心の心(ビギナーズマインド)」を持ち続けることで、コーチとしての成長には大きな違いがうまれてくるのではないでしょうか。

「あなたが目指したい理想のコーチ像はどんなコーチなのでしょうか?」

目指す過程で資格取得が役立ちそうであれば、是非チャレンジしてみて頂きたいと思います。想像以上の可能性の扉を開くような素晴らしい学びの旅に出会えることを願っています。

もちろん、生まれつきの能力の問題もまったく無視はできない。 それでもやはり、これはおまけみたいなものだ。絶え間なく、粘り強く努力する。 これこそ何よりも重要な資質であり、成功の要といえる。

トーマス・エジソン

MBCC リサーチ担当 今村佳未

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