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【MBCC通信Vol.136】恥ずかしいほど見過ごしていたコーチの倫理

吉田典生 投稿者:吉田典生 カテゴリー:MBCC®️通信コラム

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(2024年12月18日配信 Vol.136)

コーチングの倫理といえば、MBCCの受講生・修了生のみなさんや既にコーチとして活動している方は、ICF(国際コーチング連盟)の倫理規定を思い浮かべるのではないでしょうか。

しかしコーチングビジネスが成熟化している欧米では、倫理学習は多様であり、とりわけ最近は非常に熱気を帯びています。その一つの背景として、AIがコーチングビジネスに進出してきたこともあるようです。

2022年に始まったCEF(Coaching Ethics Forum)というオンラインカンファレンスは、多くのトップコーチが設立と運営に名を連ねています。今年は12月5-7日の3日間にわたり、コーチングとメンタリング、スーパービジョンに関する倫理のウェビナーやパネルディスカッション、ダイアログなどの多彩なプログラムが開催されました。

初日の短いセッションではあったのですが、頭をハンマーでかち割られたようなインパクトを受けたのが、
“Are you ready? Planning for Incapacity and Death”(準備はできている?就業不能と死への準備)
でした。

このセッションに登壇したのは、気候変動に関するコーチング業界の国際共同声明の署名者の一人であり、Climate Coaching Alliance の共同創設者でもあるイブ・ターナー氏と、アカデミアにおけるコーチング修士号・博士号導入のパイオニアとして知られるデビッド・レーン氏。

「コーチとして仕事を遂行するにあたり、不慮の事故や病気で就業不能になったり、死亡した後のことを考え、同僚やクライアント、家族がサポートし合える体制をつくっているか?」
チャットで参加者に聴くと、NOの回答が多数(私を含む)。

「サービスを継続的に提供するため、どこに必要な情報があるかを関係者と共有できるよう、事業活動に関する専門的な遺言状を準備しているか?」
チャットで参加者に聴くと、NOの回答が多数(私を含む)。

じつはこのセッションが、今年のCEFにおけるいちばん最初のプログラムでした。

職業倫理とは、いかに正しく仕事を遂行するかを理解し、実践するためだけにあるのではない。仕事ができない状態に陥ったり、永遠にできなくなる日を想定したものでなければならない。

緊急ではない…と思いたいから、多くの人がそう思っている重要事項。しかしそれが緊急事項になったときには、ブーストかけて巻き返すことはできないという事実。
ところが多くのコーチング教育機関やコーチングを提供する組織は、この問題を正面から扱っていないことへの問題提起がなされました。

私は少しドキッとしながら、数年前に買って途中まで書いたきりになっている、コクヨのエンディングノートの置き場所を確認しました。そして、次にスーパービジョンを受けるときのテーマはこれだなと心の中でつぶやいたのでした。

ICFはCEFの活動を支えるメインスポンサーですが、その倫理規定は、私たちが胸を張ってコーチとして生きていく上で必要な倫理の一部にすぎません。

(MBCCファウンダー 吉田典生)