MBCC®️受講生向けに配信されているメールマガジンMBCC®️通信から冒頭コラムを抜粋してご紹介しています。(受講生限定・メンバー限定情報などはメルマガのみの配信としています。)
登録はどなたで可能です。ぜひ登録して最新情報にアクセスしてください。

コーチングはコップの中の会話ではない
欧米人と日本人・・・というと比較対象が広すぎるので、せめて米国人と日本人を比べて・・・ということにしましょうか。
ごく一般的なイメージとして、どちらのほうが相手の話に対して反応が大きいですか。たぶん多くの人は、平均すれば米国人だと答えるのでは。
しかし奇妙なことに、コーチングの会話になると日本人は反応が大きくなる傾向があるようです。この場合はコーチ側のことを言っているのですが。
ふつうに話していると、ふつうに米国人らしい反応をする米国の有名なコーチが、コーチングのときには雑談のときより反応が小さくなります。もちろん局面や状況にもよりますが、いろいろなコーチと接していて感じることです。
じつはこれ、プロフェッショナルコーチにとっては当たり前のことです。
クライアントが大事なテーマを探求する上で、話し相手であるコーチ側の反応が意図せぬ影響を与えてしまうのを防ぐための対人支援者としての自己管理なのです。
プロとしての技能水準を審査するICFのアセッサーは、受検者であるコーチが“チアリーディング”していないかを観ています。
過剰な相槌や大げさな頷き、太鼓持ちのような反応は、加点されないどころか減点の対象にすらなります。
コーチング学習のための録音で、クライアントが何か話をしたのを受けて、繰り返し「ありがとうございます」と返すコーチもいます。
クライアントが人生の当事者として語っていることの、なにが「ありがとうございます」なの? あなたがコーチングの会話を円滑に進められるよう、クライアントが協力してくれているとでも?
社会心理学では定量的に示されている“空気を読む社会”である日本。
その「コーチング」は、コーチとクライアントが互いに気持ちよく事を運べるように協力し合って成立する、予定調和な自己啓発ゲームに陥ってはいないか。
さいきん私は、あらためてそんな危惧を強く抱いています。
カギカッコ付きの「コーチング」に合意した関係における「気持ち良さ」を勘違いして「コーチング」の外にいる相手に持ち込むと、とたんに「気持ち悪い」と受け取られます。
私は何度も、いろいろなビジネスリーダーや誠実で知見のある多様な世界の人たちに、そういう本音を聞いたことがあります。そのうちの何パーセントかは私のクライアントですが。
狭い枠の中にいる当事者間では大騒ぎしているが、広い世間からみれば大した問題ではなく、何の影響なく終わってしまうことを“コップの中の嵐”と言いますね。
英語の”storm in a teacup”からきているようで、ヴィヴィアン・リーがヒロインを演じた古いイギリス映画では“茶碗の中の嵐”と訳されていました。
この有名な言葉になぞらえれば、日本におけるコーチングは「コップの中の会話」に陥っていないでしょうか。
ICFが「コーチングを自然な会話にしていくこと」を熟達への道として強調しているのは、コーチングの会話とはほんらい大海原を帆をあげて進むような会話だからです。
私が高校生のとき、人生で初めて読んだ経営者の本はホンダの創業者である本田宗一郎の『得手に帆あげて』でした。
まさにコーチングは、クライアントの得手をともに探求しながら帆をあげて進むジャーニーでありたい。
そのためには、コップの中にいる安心から大海原に飛び出していく勇気も必要です。
(MBCCファウンダー 吉田典生)