コーチングとメンタリングの区別と融合

Vol.157(2025年11月6日配信)

「コーチングとメンタリングはどう違うのですか?」
と聞かれたら、あなたはどう答えるでしょう。

グーグルで検索すると、最上部に複数の情報源から回答を自動抽出した要約が出てきますね。試しに私が“コーチング メンタリング 違い”と入力した結果、AIの回答は次のようなものでした。

コーチングとメンタリングは、どちらも人材育成の手法ですが、コーチングは「目標達成のための具体的な行動支援」に焦点を当てるのに対し、メンタリングは「メンターの経験に基づいたアドバイスによる中長期的なキャリア形成支援」に焦点を当てます。また、コーチングが主に対話から本人が答えを「引き出す」アプローチを取るのに対し、メンタリングは「アドバイスや経験の共有」も行います。

その下1ページ目に出てくるのは、主に人材育成系のコンテンツやサービスを提供している企業のサイトでした。

コーチングは相手に質問し、傾聴しながら社員自身で答えを引き出すことを促す手法です。これに対してメンタリングは、対話を通してメンティの課題や悩みを明らかにし、必要に応じてアドバイスを行います。先輩としての経験、知見を共有しながら課題解決を支援するのが特徴です。 コーチングは相手の具体的な課題解決や目標達成に焦点を当てるため、比較的短期間で行われます。一方、メンタリングはメンティの中長期的なキャリア形成を目的にしているため、期間も長くなる傾向があります。

海外の学術文献を参照していることは察せられますが、査読論文の中身を十分に理解した解説ではなく、初めて情報に触れる人に対してミスリードになることを懸念します。

そもそも企業内の人材育成の枠組みでのみ、「コーチング」「メンタリング」を説明するものが目立ち、コーチングが「個人が組織から与えられている業務遂行を支援するための手法」だという誤解を与えかねません。同じようにメンタリングも企業内における“メンター制度”のような枠内で語られていますが、社外メンターとのインフォーマルなメンタリングも存在します。

コーチングは比較的「短期」で実施されるもの・・・という説明も、実際はコーチングのカテゴリーや目的によって多様なので、正確な説明とは言えません。
さらにコーチングでは助言はしない、メンタリングはメンターの経験にそって助言する・・・という区別も、最新のコーチングの職務分析からみて不正確です。

ICF(国際コーチング連盟)のコアコンピテンシー(2025年改訂)では、コーチからクライアントへの知識の共有が明記されています。これはコーチングの専門性にもとづく原則をふまえての実践です。
またEMCC(欧州メンタリング&コーチング評議会)では、もとより2つの手法を適宜往来させるような表裏一体のものと位置づけています。

コーチがメンターのように自分の経験を活用することは、状況と目的に応じた選択肢の一つです。またメンターが経験に頼りすぎることは、質の高いメンタリングの再現性を下げることになります。

既にコーチとして活動している人、これからコーチングを学ぼうとしている人が、コーチングとメンタリングのほんとうの関係を理解し、それらを融合させていく可能性を拡げていきたいと思います。

(MBCCファウンダー 吉田典生)


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