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クライアントを「賢馬ハンス」にしない
先日のイベント(*1)でのことです。
MBCCファウンダーである吉田典生のコーチングを紐解いて学ぼうという場だったのですが、その中で話題になったことのひとつに「コーチの表情や反応」がありました。
マインドフルリスニングのトレーニングで、コーチの反応は自然な頷き(うなずき)程度とし、大げさな頷きや相槌をしない、ということを経験している方も多いと思います。
実際、当日の吉田のクライアントへの反応もミニマムなものでした。
参加者(コーチングセッションを観察していた)のある方からは、「コーチがあまり笑わなかったり、頷かなかったりすると、少し話しにくく感じる」という声がありました。
一方で、実際にコーチングを受けたクライアントの方は、「コーチの表情が無表情に近かったり、頷きが少なかったことはまったく気にならなかった」と話されていました。
このやりとりを聞きながら、私は「賢馬ハンス(Clever Hans)」(*2)の話を思い出していました。
昔、人間の言葉が分かり計算もできるとして19世紀末から20世紀初頭のドイツで話題になったハンスという馬がいました。
しかし後の実験で、ハンスは計算ができたのではなく、周囲の人間の微妙な表情や緊張感を読み取り、それに反応していたことがわかったのです。つまりハンスは、「答えが正解に近づくと飼い主や周囲の人が緊張し、それが最高潮に達したときに反応する」という行動を取っていたのです。
この話を思い出しながら、「私たちのコーチングでも、似たようなことが起きているのではないか」と感じました。
(クライアントを馬に例えるのは失礼かもしれませんが…)
私たちは無意識のうちに、人の話に対して頷いたり相槌を打ったりします。
そして、特に「自分が共感する話」に対しては、大きく頷く傾向があります。
もしコーチが無意識にそうした反応をしてしまうと、クライアントは本当に話したいこと、話す必要があることではなく、「コーチが笑ってくれる話」「頷いてくれる話」「同意してくれる話」を無意識に選んで話してしまうかもしれません。
逆に言うと、私たちコーチが自身の反応により、クライアントに無意識にコーチの期待を感じさせ、クライアントの話す内容を誘導してしまう可能性があるのではないか?ということです。
マインドフルリスニングを入門クラスで扱うとき、よく「反応が薄いのはなぜ?」という質問をいただきます(反応をしない、のではなく自然な反応以上の動作をしない、なのですが)。
「聞く=相槌を打ったり聴いていることを示すこと」という認識があることも多く、違和感を覚える方も少なくありません。
なぜ私たちが自身の反応を認識し、管理する必要があるのか。
話しやすさ・親しみやすさと、クライアントが自分で話すことを決めて自分で内省する場だと認識すること。
これは「どちらが良いか」という話ではなく、バランスや関係性の話でもあります。
当日、皆さんの意見を聞きながら、「話しやすさは大事。でも、クライアントをハンスのような存在にしてはいけない」と改めて感じました。
(MBCCコーチ・トレーナー:関口詩乃)
*1 = イベント「コーチング解体新書リターンズ開催しました」https://note.com/3poyoshi/n/n3aa4bba6339d
*2 = 賢馬ハンス Wikipedia