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コーチが自分を満たす、ということ
コーチが心からクライアント中心の理念に沿って対人支援者でありつづけるには、コーチ自身が満たされていることが必須だと思います。
それは決して人生に悩みなど何一つない状態でなければならない、ということではなく、あるがままの自分を十分に受容できている状態という意味で。
頭脳労働、肉体労働という労働形態に加えて、感情労働という概念が生まれたのは1980年代に入ってからです。
コーチという仕事に感情労働の側面が強く存在することは間違いないので、まず学術的な定義を押さえておきます。
感情労働(emotional labor)の概念を提唱したA.R.ホックシールドは、著書『The Managed Heart―Commercialization of Human Feeling』(邦題 『管理される心―感情が商品になるとき』)で、次のように説明しています。
職務遂行にあたり「公的に観察可能な表情と身体的表現を作るために行う感情の管理」
対面や電話、オンライン等での声による顧客との接触があり、その接触を通して相手の感情に何らかの影響を及ぼすのが感情労働の特徴です。
その影響を望ましいものにするために、感情労働においては具体的な職種の特性や求められる要件に応じて、感情を管理することが求められます。
そこで、この感情労働の下位概念に感情規則があります。
たとえばICFコアコンピテンシー2【コーチングマインドを体現している】の定義:『開放的で好奇心を持ち、柔軟性があり、クライアントを中心に据えた思考態度を開発し、維持している』は、感情労働論からみるとプロフェッショナルコーチに要求される感情規則の一つといえるでしょう。
ここでホックシールドは重要な指摘をしています。雇用者側(感情労働者を雇う組織)が複数の感情規則にもとづく感情の管理を被雇用者に求めるとき、感情労働者は職業上で演じなければならない姿と自分の本当の感情を区別できなくなる恐れがある、という問題です。
ホックシールドの指摘をプロフェッショナルコーチという仕事に照らし合わせたとき、いかにコーチ自身の自己認識と自己管理が重要であるかがわかります。
感情労働者であるプロフェッショナルコーチは、世界共通のコンピテンシーのもとで感情規則を遵守しなければなりません。
しかしそこに本来の自分が存在しないのであれば、ICFコアコンピテンシー5【今ここに在り続ける】の定義:開放的で柔軟で安定的で自信に溢れる態度をもって、クライアントに対して感覚をフルに開き、今ここに共に在り続けている・・・は、体現できないでしょう。
クライアントはコーチのどこかに無理があることや、取り繕っているような態度に違和感を覚えるかもしれません。
感情規則によって職業と自分自身が分離されないためには、コーチが自分の人生を生き、満たされていなければなりません。
コンピテンシーに書いてあることを頭で理解するまえに大切なこと。
それは、
私はいま満たされているか?
私は自分の人生を十分に受け入れているか?
を問い続けることではないでしょうか。
(MBCCファウンダー 吉田典生)