Mindfulness Based Coach Camp 典生人語

メタスキルとしての自己認識(セルフ・アウェアネス)

MBCC事務局 投稿者:MBCC事務局 カテゴリー:典生人語

自己認識=セルフ・アウェアネス

メタスキルとしての自己認識(セルフ・アウェアネス)

マインドフルネスを「今、ここに注意を留めることによって現われてくる気づき」と定義すると、その全方位の気づきの中には当然、「自己観」が含まれます。自己観の変化は世界観や歴史観、仕事や人生の価値観に影響をもたらすでしょう。

たとえば大病を経て人生観が変わったという話を聞くことがあります。その人生観は「自分の命」と向き合うことによる変化ですから、まさに自己観の変容がもとにあると思います。

自己観と称すると仏教的なニュアンスが強いのですが、これはリーダーシップや組織開発の文脈では、自己認識=セルフ・アウェアネスとして注目されているトピックです。

セルフ・アウェアネスを開発していくヒント

セルフ・アウェアネス研究の第一人者であるターシャ・ユーリックは著書『insight~いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』で、次のように述べています。

<現在の世界における成功にとって極めて重要な各種の力心の知能指数、共感力、影響力、説得力、コミュニケーション力、協調力などは、すべて自己認識がもとになっている>

リーダーシップコーチのEmy Kan氏がfastcampanyに寄稿している『セルフ・アウェアネスは成功の鍵。あなたを磨く5つの方法』は、研修と個別のコーチングを組み合わせてセルフ・アウェアネスを開発していくヒントになります。以下、私の補足も加えながらご紹介します。

(1)フィードバックを受ける

前述のターシャ・ユーリックも繰り返し言及していることです。ポイントは一回きりではなく「繰り返し」「定期的に」受けること。仕事の環境が変われば、あなたが周囲に及ぼしている影響も変わっている可能性が高いからです。また上司や同僚、部下など全方位からの声を聴くことも重要です。

(2)リフレクション

原文では「成功と失敗をふりかえる」となっています。それぞれのパターンや備えているリソース、足りないリソースなどを学習していくプロセスです。コーチングではクライアントの成果にコミットするとともに、この学習の質を上げていくことが必須です。

(3)継続的に学ぶ姿勢

原文では、STRIVE FOR CONTINUOUS IMPROVEMENT(IN YOURSELF)とあります。

社会的地位を得ることで次第に耳の痛いことを言ってくれる人が少なくなり、それは傲慢さや尊大さをもたらす危険因子です。偉くなると男性ホルモンの一種であるテストステロンの分泌が過剰になり、他者の立場に立って考えることの障害になることが研究でも示されているのです。

そういう脳のメカニズムを知っておくことは、予防手段としての学び続ける習慣の助けになるでしょう。

(4)マインドフルネスの実践

原文の筆者は、注意の安定化や集中力の高まりといったマインドフルネスの基本的なポジティブインパクトを示し、それが「聞き上手」になることを助けると述べています。まったく異論のない指摘なので、ここでは別の補足をしておきます。

それはマインドフルネスの実践を、自己認識を高める方法として、過大評価してはならないということです。マインドフルネスは自己認識のための土台を耕していくものであり、耕した大地の上でするべきことは他にもあるのです。(ここに紹介されているようなこと)

(5)アセスメントを受ける

(1)の「フィードバックを受ける」との違いは、周囲の自分に対する評価に限らず、自己の特性を把握するために有用と思われるツールを使おう、ということです。エモーショナルインテリジェンスの傾向、コミュニケーションスタイル、潜在的な強み、学習スタイルや行動特性など。精度の高いアセスメントは、バイアスを排除した客観的な自己認識の促進をサポートします。

発達理論から俯瞰してみると、人間の発達とは極めて多様な要素が織りなされた、非連続的な旅路です。その全貌をここで整理することはできませんが、少なくとも、「特定のアプローチで連続的に上がっていく」ものではないことは明らかです。

大事だけれど複雑なことを放置してしまわないために、ここに示されている5つのポイントは、とても有効な助けになるでしょう。

2021.3.13

MBCCファウンダー 吉田典生