Mindfulness Based Coach Camp 典生人語

ゴール設定の原則

吉田典生 投稿者:吉田典生 カテゴリー:典生人語

1年ぶりに関西に出張のため新幹線に乗っています。先方の事情があり不要不急ではない移動です。けっこう人が乗っており、後方の席からは若い女性二人組のけたたましい笑い声も。

1都3県の緊急事態宣言は続いていますが、その意味合いは極めて希薄になっていると感じます。

いま私たち国民は、何のために、どこに向かって、何をどのおうにしようとしているのか。

すべてが曖昧で、ぼんやりしたまま、その中に不安や憂鬱が漂っているようです。

これ私の記憶からみると、お題目はあるけれど、誰も本気じゃなくて、惰性で経営資源を浪費していく企業に重なります。

ゴール設定の原則を整理

ゴール設定の原則

あらためて組織を動かしていくチームコーチングの観点から、ゴール設定の原則を整理してみようと思います。

体的かつ簡潔にゴールを描く:受け取り方に違いが出ないよう、誰にもわかる言葉で意識下にとどめる。今の目標はなんだっけ?と質問したら、誰もが同じ言葉を使って説明できることが肝要。

小さなステップを刻む:これも具体的に、そして「まず、ここまでならできそうだから、やってみよう」と思えるゴールにする。それを行動しながら適宜調整していく。

測定指標を明確に:事象や自分に対する評価には、人それぞれの傾向があります。同じ一つの結果でも、「80点くらい」と評価する人もいれば、「50点くらい」と言う人もいます。当事者たちの知識や経験、リテラシーに左右されずに使えるモノサシを探し、定期的な進捗確認が容易に行えるようにする。

ゴール調整を織り込む:決めたからには必ずやり切ろうという意志と同じくらい、変化を察知して、そこから学び、ゴールを調整していくことへの合意が大切。これがうまくいくか否かの鍵は、達成目標だけではなく「学習目標」を共有することです。自分にとっても組織(あるいは社会)にとっても、これは意義ある学びだという実感。これが失敗の糧にもなります。

たとえば今の新型コロナより、もっと恐ろしい感染症が発生した時に備えて、安全かつ継続的に日常生活を営むためのティップスを確立しよう。そんな学習目標を立てて、社会全体で学びを共有していったらどうでしょう。想定どおりに行かなかったことが学びになり、誰かの経験が共有されて、コミュニティの形式知が更新される。そうするとゴールに向けて一歩も前進していなくても、人々の内面では価値のある前進を実感できるのではないでしょうか。

誰もが自分を励ます:こういうとき、ふつうは「励ましあおう」が理解しやすい精神論ですね。平均レベル以上の関係性ができている職場やコミュニティであれば、大よその合意として「励ましあおう」に異論は出ないでしょう。それより実際に難しいのは、なかなか結果を出せない自分を「自分で」励ますことです。

自分を励ます

自分を励ますことが欠かせない

うまくやれている人から励ましてもらっても、力になるとはかぎりません。他者との比較で自分をとらえていると、自己憐憫を強めてしまうこともあります。そもそも精神的に相応のダメージを負っている状況では、他者を励ますという行為自体にリスクが伴います。

想定通り順調に進むことなど人生では稀です。大きな成功をおさめているように見える人のほうが、何度も谷底に突き落とされるような経験をしていたり。「私が自分に甘いのではないか」「私だけ能力が足りないのではないか」といった心の声が聞こえてくることも、多くの人が経験しているでしょう。

だから職場やコミュニティ、社会全体の合意として、「もっと自分を励ます」ことが、難しいゴールに向かうプロセスには欠かせません。自己批判が強まっているときの脳は、視野狭窄で衝動的な言動をとりやすいことが研究でわかっています。反対に自分を十分に受容できている状態では、視野が広がり創造性を発揮できるような神経の働きが活性化します。

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「緊急事態宣言」という言葉が空疎に響く今、もういちどゴール設定の本質をとらえ、それぞれが自分を励ましながら、この惑星の当事者として自分にできることを考えてみては。リーダーシップとは、自分で自分を律するセルフリーダーシップから始まるのだから。

MBCCファウンダー 吉田典生