Mindfulness Based Coach Camp 典生人語

非効率な学びの価値 ~オンライン講座と集合研修の違い~

吉田典生 投稿者:吉田典生 カテゴリー:典生人語
コロナ前の学びの様子 MBCC基礎8期生

コロナ前の学びの様子 MBCC基礎8期生

会うことで生まれる学びの価値

コロナ禍前までのMBCCのトレーニング会場には、糖分補給のためのチョコなどお菓子が並び、休憩時間には部屋の四方八方で語り合う受講生、サポートするコーチの姿がみえました。

夕方に講座が終わっても部屋の中で会話が続き、週末2日間のうち1日目の土曜日に行う飲み会の参加率は、異様に!?高かったものです。

2日目が終わると、運営メンバーは会場近くの店で食事。2日間をふりかえり、翌月のパートに向けて話し合い、それと紐づくことや、紐づかない話を思うままにする。そこから、また新しいアイディアが出てきたり、思わぬ課題を発見したり。

1年前、それまで全く想定していなかった、基幹講座の完全オンライン化を決断しました。オンラインでマインドフルコーチングを学べるか。できる、できないではなく、「できるようにする」一択で突き進みました。

結果として新しい学びの可能性が広がり、新たな出会いが生まれました。遠方に住むことが障害となって参加を躊躇していた人たちが、Zoomを通して仲間に加わってくれる機会も増えました。

効率性と利便性の裏側にあるもの

オンライン講座

オンライン学習という環境に慣れてくると、次第に多くの人々が効率性を実感するようになりました。「対面せずに深い学びができるのか」という不安や抵抗感を、効率性や利便性が総和として上回るようになってきたと思います。こうした認識の変化は、さまざまな企業顧客とのミーティングや研修でも感じます。

コロナ禍前をふりかえると、いかに私たちは非効率に学んでいたものかと思います。移動時間、ときに宿泊、会場の手配、対面しているがゆえに人によっては生じるストレスのケア。

しかし、その非効率は非連続的な学びをもたらす機会でもあります。予定していないアジェンダが生まれ、雑談のなかで相手がどんな人かわかり、一人で帰る車中で自然にリフレクションがなされる。

あらかじめ準備したものを伝えることに関しては、オンライン学習がハンデになることは非常に少ないです。むしろ利点さえ見えてきます。しかし学びには、偶発的に現われてくる想定外の領域があります。その自由なスペースは非効率さと裏表の関係にあります。

これはオンラインでどうにか補うという問題ではないと思っています。対面学習の復活も含めた、最適な組み合わせとなる新たな学習デザインへの挑戦が待っています。

壮大な無駄の中に現れる偶発的な学びの価値

大学の教室で講義

大学生のオンライン授業が今年も続こうとしています。昨年の1年生のなかには、まだ一度も大学の教室で講義を受けていない学生も少なくないようです。

全国大学生活協同組合連合会の調査 は、1年生(4月から2年生になる学生たち)の思いを浮き彫りにしています。

30大学、11,028人の回答をみると、調査時点の1週間の平均登校日数は2.0日。これは前年(4.4日)の半数以下で、登校日数0日の学生が27.1%。さらに東京など1都3県では、登校日数0日が45.5%にも上っています。

うちの娘は大学2年生の一年間、ほぼ100%オンラインで講義を受けていました。その様子を見る限り、知識を修得することについての障害は少なかったと感じています。しかし上京したての1年生で、友達がいない中での一人暮らしだったら、まったく状況が違うことは想像に難くありません。

「大学生活が充実している」と答えた学生は、全体では74.2%(昨年比マイナス14.6%)。これが1年生にかぎると56.5%(1983年の調査開始以来、最低)という結果。

自分の大学時代をふりかえると、そこにあったのは計画的ではない壮大な無駄のような気がします。

開店から閉店まで関大前通りの喫茶店に居座って学園祭について話し込んだり、夜中に思い立って中古の軽自動車(エアコンもついていない初代アルトのライトバン)に男4人で乗り込み、2ストロークのエンジンをうならせながら名神高速を走って早朝から福井の海で泳いだり。村上龍の『コインロッカーベイビーズ』 を下宿の布団に入ったまま昼夜日をまたいで読み耽り、出欠のうるさい講義を忘れていたり。

学びと学びではないものを線引きしてしまうと、生きていくのに必要な無駄が省かれていくような気がします。

学びと学びではないものを線引き

学びと学びではないものを

それは受験期やコロナ禍の緊急対応として必要なことでもあるけど、効率性に気づいて非効率の価値を忘れてしまうのは、まずい。

コロナ禍で探る非効率の学びとは。

完全オンライン化から1年が経過した今、それが自分の中にある問いです。

MBCCファウンダー 吉田典生

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