だから1.5℃って、どういうこと?
疑う余地がない結論
産業革命以降、地球の平均気温が人間の活動によって上昇、温暖化してきたこと。
これが疑う余地がない科学の結論です。※参考:IPCC(気候変動に関する政府間パネル 第6次報告書)
日本ではいまだに温暖化懐疑論といったものが飛び交っていますが、その多くは陰謀論の類かそれに近いものであり、「科学者」と称する人たちの主張も矮小化したデータを取り出して反論のための反論を繰り返しているにすぎません。
なぜそんなことをする「科学者」が出てくるのかは定かではありませんが、化石燃料産業など脱炭素化で既存事業の利益を失う集団からの猛烈なロビー活動、資金援助があることは周知の事実です。
もう一つの、疑う余地がない結論
気候変動は長い地球の歴史において繰り返されており、自然の営みでも確認することができます。
しかし私たち人間の活動に起因する気候変動の影響は、地球自体の自然な変動の範囲を逸脱しています。それがもたらしている温暖化が、生態系と人間社会に大きな損害をもたらす
要因となっています。これがもう一つの、疑う余地がない科学の結論です。
196か国の共通目標
温室効果ガスは大気中と海水に長期間にわたって蓄積されていきます。入ると同時に宇宙に消えていくわけではないので、この先、地球が受け入れ可能な量は限られます(これをカーボンバジェットと呼びます)。
2024年の段階でも温室効果ガスの排出は続き、それに伴って気温が上昇しつづけ、その上昇が一定の範囲を超えると“不可逆的な影響”が及ぶこともわかっています。
これは複雑な気候のメカニズムの働きによるものなので全体像を簡単に説明はできませんが、要するに手の施しようがなくなるのです。地球の許容範囲を超えてから世界中が100%自然エネルギーを実現させ、温室効果ガスの収支をゼロ(カーボンニュートラル)にしても、もう遅い(!)のです。
では、どのくらいまでの温度上昇に留めればよいのかが議論され、はじめて具体的なゴール設定を行ったのが2015年のことでした。
「世界的な平均気温上昇を産業革命以前 に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」
これが2015年12月のパリ協定(2016年採択)の決議事項で、現在の気候変動対策のベースになっています。その後の研究で+2.0℃と+1.5℃では“不可逆的な影響”へ向かうリスクや発生する災害などの影響の度合いが大きく異なるとの見解が明確になり、1.5℃は努力目標から達成目標となりました。
気候危機は経済危機
世界の平均気温が1℃上昇するごとに世界のGDPが12%減少していくと報告されています(2022年、NBER全米経済研究所)。このシンクタンクによるワーキングペーパーの内容は、ガーディアンやエコノミストなど世界の多くの有力メディアで報じられています。
これは従来の各国別の気象災害に関する試算を大幅に上回るもので、脱炭素に必要な投資のコスパの高さを強く裏付けています。
対策には多くの費用がかかるけれど、その費用は経済へのダメージを補って十二分に余りのあるものです。
これが世界のビジネスセクターが脱炭素に向けて動き出している理由です。あえて付け加えると、思想や信条、人生観の問題ではありません。そういったことが根底にあるリーダーや企業も存在するにせよ、それだけで大きな潮流となることはないでしょう。
業績の中期見通しを弾いていったら、脱炭素への投資はビジネスで勝つために当然のことなのです。だから世界は動いています。
日本ではあまりにも一般への情報が乏しく、メディアの理解も極めて不十分だと感じています。
私たちは気候問題へのコミットメントを国際声明として発表しているICF(国際コーチング連盟)の一員として、また脱炭素を通して持続可能な社会の実現を目指す日本のビジネスアライアンスであるJCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)の一員として、1.5℃に整合した取り組みへの構想、パーパスの共有、行動戦略の支援に取り組んでいきます。
気候コーチング(Climate coaching)を日本から世界へ
またその一環として、これからコーチング、人材開発、組織開発を通してご縁のある企業の皆様、ともに学習する受講生のみなさまに向けて、気候危機と脱炭素に関する理解を促進するための情報を定期配信していきます。
子供たちに今より良い世界を遺していくために、共に議論しながら探求と実践を続けていくコミュニティを形成していきたいと考えています。
MBCCファウンダー・エムビーシーシー合同会社CEO 吉田典生