リモートワークに必要なリーダーのスキル ~NYのプロコーチから学ぶ~
コロナの流行により世界中の人々が翻弄されたことは、多くの人にとって生きる「価値観」を見直すきっかけとなりました。
ビジネスの現場では、従業員の新しい「価値観」を考慮したアプローチにシフトしていく必要があります。では、具体的な新しい「価値観」とは?そして、どのようなリーダーの「在り方」が求められているのでしょうか?
米国ニューヨークで活躍する国際コーチング連盟(ICF)認定コーチInna Post氏は、パンデミック以来の働き手の変化とそれに効果的なリーダーのコミュニケーションスキルを、クライアントへのコーチング経験を元に分かりやすく解説されています。
彼女の語る4つのテクニックは、リモートワークであってもリーダーがチームメンバーとの信頼関係を構築し、チームのエンゲージメントを高めていくために効果的な方法です。ご自身の普段のコミュニケーションと照らし合わせ、セルフチェックの機会としても確認してみて下さい。
パンデミックによる働き方の変化
アメリカでは「辞職」「転職」の数が増加しており、 米国労働省によると2021年4月からの6カ月間で、なんと1150万人が仕事を辞めたそうです。また、ハーバードビジネスレビューによると、 従業員の48%が積極的に転職を考えており、4人に1人近くが今後6か月以内に転職をするとしています。企業側は、パンデミックのダメージから回復するだけでなく、人材確保においてもストレスを抱えていると言えます。
現在の従業員は、ハイブリッド型ワークプレイスの柔軟性を求めており、雇用主から評価され、組織の価値観が自分の価値観と一致していると感じたいと考える傾向があります。
大量の人材を失いビジネスに終止符を打つことを防ぐには、従業員がコミュニティの一員であることを実感する必要があります。ゲームのルールが変わったのですから、私たち全員がそれに適応する必要がある、とInna Post氏は明記しています。
現在、日本ではアメリカのような転職者数の急増は見られないものの、6割以上の人が転職を希望していること(Job総研「2021年転職意識調査」)や、昨年上半期の実績では7割以上の企業が採用計画を満たせなかった((株)リクルート「2022年転職市場の展望」)という状況から、日本でも人材確保が企業にとって大きな課題となっていることが伺えます。
また、「働き方」や「仕事」に対する価値観の変化により、仕事への優先順位が変わってきています。
昨年のサーベイによると「新型コロナウイルスの影響が、転職活動のきっかけになっている人が約6割」になり、コロナ禍での転職検討理由の上位は、「会社のパーパス(目的)や仕事の意味にシフト」していることから(株式会社リクルート2021年調査結果より)、自分自身の「ライフスタイル」や「価値観」によりフィットした仕事を求める傾向が表れているようです。
更に、リモートワークや非対面式の業務が増えたこともあり、コミュニケーション方法も変容しています。特にオフィッスワークでは、一気にオンラインコミュニケーションが加速し、利便性が増した一方で、なかなかオンラインコミュニケーションに馴染めない人もいます。
オンラインコミュニケーションに効果的な4つのスキル
ビジネスコーチとして活躍するInna Post氏は、リーダーが優先順位を上げて取り組むべきコミュニケーションテクニックを4つのポイントに絞りました。この4つのポイントを実行することで、コミュニケーションの質が上がり、「信頼」が生まれます。
そしてチームメンバーはチームの一員であることが実感できる環境下で、ビジネスの課題にフォーカスすることができる。結果的にチーム力が上がり、ビジネスの成長にも繋がることが期待できます。
① アクティブリスニング (Active Listening)
アクティブリスニングとは積極的に「傾聴」を行うためのコミュニケーション技法です。しっかりと「耳」を傾け、表情や仕草を「目」で確認し、言葉の奥にある真意や感情に「心」を配り、積極的に聴くこと。意識していないと「耳」「目」「心」のどれか又は全部が離れてしまう為、意識的に取り組む必要があります。
そして特に「Zoom」などによるオンラインコミュニケーション時は、他の人が話しているときは無言になりがちです。しかし、話し手は自分の話を聞いてくれていることを知ることで安心できます。できる限りカメラをつけたまま、同僚が話している間にうなずいたり、微笑んだりするようにしましょう。カメラをオフにしなければならない場合は、ミュートにしないでください。会話に貢献し肯定的な意見を述べることで、話し手が一人で空虚に話しているように感じないようにしましょう。
② 対立の解決(Conflict Resolution)
他人と競争しないこと。常に一方に問題を、もう一方にチームを置いてください。そして仲間意識と共感を示すために、「私たち」という言葉を使いましょう。
チームメンバー間の対立を解決しなければならない場合、誰が “正しく“、誰が “間違っている“のかを探ろうとしないことです。その代わり、全体像に目を向け、目の前の課題に対して最善の解決策は何だと思うかを尋ねてください。感情を除くことで、人は考える視点を変え、問題の本質に気づくことが出来ます。
③ 効果的なコミュニケーション (Effective Communication)
話すときはいつも「なぜこの発言をするのだろう」と考える時間を持ちましょう。目標達成に近づけるか?“と考えてみてください。頭の中で、あるいは紙に書いて(Zoomでは誰にも見られないので)、要点をまとめてから話しましょう。正確な言葉を使い、伝えようとしているコンセプトをシンプルにする。わかりやすく伝えれば伝えるほど、同僚はその話に乗りやすくなります。
④ リレーションシップマネジメント(Relationship Management)
ミーティングはポジティブな話題から始めると効果的です。例えば、特定の人が前回の会議以降に達成したことを褒めてみてください。こんな言い方もいいでしょう。
「このような問題を解決しなければならないのは、今回が初めてではありません。先週、回避策を見つけてくれたジェーンに拍手を送ります。では、どうすればこの問題を解決できるか、一緒に考えましょう。」
また、(オンライン・オフラインの両方で)その場で最も声が大きく、目立つ人が、必ずしも良いアイデアを持っているとは限らないということも認識すべきです。その人の知名度だけでなく、個人の貢献度を判断するのがリーダーの責任です。チームメンバー全員が会話に貢献できる時間を持てるようなシステムを作ることも有効です。メンバー全員がチームでの存在価値を感じられるよう、日頃からメンバーの小さな貢献にも気づき、コミュニティ感覚を出せるような働きがけをすると効果的でしょう。
コーチングで質の高いアウトプットを増やす
世の中で起こっている「価値観の変化」や4つのコミュニケーションテクニックを読まれ、あなたの「心」に残ったことは何でしたか?取り組みたいと感じたことはありましたか?もしあれば、「いつから」「どうやって」やりますか?そして、あなたの取り組みは、どんな影響を生むでしょうか?
インプットされた情報を元に、どうアウトプットに結び付け、行動レベルで変化を起こすのか。
コーチングでは、「考えていることを整理する」「新しい発想を生む」「偏った考え方に気づく」「意味や価値のあるゴール設定が出来る」「期限が明確になる」など、行動に移していく為の要素に溢れています。
質の高いアウトプットを増やしコミュニケーションの質を上げていく為に、是非コーチングの力も活用してみて下さい。
MBCCリサーチ担当 今村佳未
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