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『空気』に支配される日本のチームコーチングとは

「そんなの、ぜったいおかしい」と思いながら、みんな何も言わないので黙っていた経験ないですか。

日本人論で知られる山本七平(1921-1991)は、この「みんなで黙っている」という状態に象徴されるような暗黙の合意を『空気』と呼びました。そして『空気』で物事が決まっていくところに、日本社会の特徴と弱点を見出しました。
日本が破滅に向かっていく太平洋戦争末期のこと。なぜ、制空権を失っているのに(米軍機の攻撃は必至)戦艦大和を沖縄に派遣したのか。戦後、山本は戦時の記録をたどり、参謀長の一言が「もう何も言えない(従うしかない)」という『空気』を生んだことを指摘します。
その一言とは、「一億総特攻のさきがけになってくれ」というメッセージでした。

このことが綴られている『空気の研究』は名著として知られるロングセラーであり、タルコット・パーソンズらの社会システム論に通じるものとして今日も多くの社会学者が言及しています。

人間関係や社会のさまざまな構成要素の相互関係から、社会の構造を理解しようとするのが社会システム論です。
前述の全員死ぬことがわかっている沖縄特攻という意思決定には、『みんな』の総意を作り出す構造があったというのが山本の見立てでした。
戦艦大和の隊員のAもBもCもDも、全員が特攻するべきだと考えていたのか。そうではなく一人ひとりは「もう何も言えない」と感じていたわけで、史実を示す文献からは「言いたい何か」があったことがうかがえます。

当時の状況を考えれば、その「何か」が「全員死ぬことがわかっているのだから、考え直しましょうよ」や「そんなの意味ないでしょ」、あるいは「馬鹿じゃねえの、わざわざ死にために行くなんて」といった異論や反論だったことは容易に推察できます。

つまり本当の個人は別の考えや思いを持っているのに、集団の相互作用によって作り出された『空気』が、判断と意思決定、行動を駆動していったと考えられます。
ここにはフィジカルな実体のない『みんな』という存在があります。これが山本の発見した『空気』です。

世界的に注目されるようになってきたチームコーチングには、バラバラで主張しあう個人が関係性への気づきを深め、集合知を高めることへの期待があると思います。
このような個人主義の傾向が強い西洋で体系化されたアプローチは、『空気』=実体のない(けれど確かな)『みんな』・・・に支配されやすい日本で通用するのだろうか。空気に弱い日本を再生するためのチームコーチングには何が必要だろう。
さいきん私の中では、そんな問いが立ち上がっています。

(MBCCファウンダー 吉田典生)