MBCC®️受講生向けに配信されているメールマガジンMBCC®️通信から冒頭コラムを抜粋してご紹介しています。(受講生限定・メンバー限定情報などはメルマガのみの配信としています。)
登録はどなたで可能です。ぜひ登録して最新情報にアクセスしてください。

西洋で生まれたコーチングは東洋に馴染まない?
コーチングを体系的に学んでいる人をクライアントにする場合と、そうではない(圧倒的多数の)人をクライアントにする場合では、はじめてコーチングの関係を結ぶにあたり様々な違いが発生することが考えられます。
たとえば企業が何らかの基準でコーチングを受けさせたいと思う社員を選抜し、外部のコーチをつける場合。
事前のオリエンテーションで、コーチから次のような説明をしたとします。
「これから実施していくコーチングは、コーチが解決策を示し、指導するものではありません」
「あなた自身が適切なテーマや行動を見出し、成果を出していくことを支援するのがコーチングです」
これらの「原則」を丁寧に扱い、またその説明も双方向で(クライアントから気づきを引き出すように)行ったとしましょう。
満を持してコーチングが始まります。
コーチ:どんなことを扱っていきたいですか?
クライアント:経験年数の長いベテランの言動に手を焼いているのです。どんなふうに関わればいいかアドバイスいただきたいです。
コーチングとは指導を受けること・・・という認識をもっていること、あるいは求めているのは指導である・・・ということが、ちょっとした言動に現われることがあります。
このことは、もしかすると日本を含むアジアにおいて顕著なのかもしれない、ということにふれてみたいと思います。
そもそもコーチングの専門家を育成する教育では、コーチとクライアントは対等な関係であることを強調します。しかし、これはコーチングの理念とメソドロジーが、個人主義の根づいた西洋文化のなかで発達したことと無関係ではないでしょう。
かつてインドの研究者たちがアジアのエグゼクティブコーチたちを対象に行った研究によると、中華圏やインド、東南アジアや日本における集団主義、社会的階層が個人のアイデンティティ形成に及ぼす影響などが、コーチングの効果性と関連していることが報告されています(The Coach in Asian Society: Impact of social hierarchy on the coaching relationship : International Journal of Evidence Based Coaching and MentoringVol. 8, No. 1, February 2010)
この論文には、
「クライアントからアドバイスや提案を期待される」(タイのコーチ)
「成長過程で親の影響が強いため、質問や自分で考えるよりも指示されることに慣れている」(香港のコーチ)
といったコメント、さらには
「私のクライアントは単に質問されることを期待していない。彼らは私のアドバイスや提案を求めている」
という日本のコーチ(!)のコメントが紹介されています。
一方で、“一部のコーチ”は、「クライアントがアドバイスに依存しすぎないようにコーチする」ことで、次第に「コーチングの仕組みを理解するようになる」と述べられています。
ここで著者らが展開している西洋と東洋の文化的な差異にもとづく効果的なコーチングの違いという主張は、文化への過剰適応とコーチングの混乱を招きかねないと私は思います。ただその半面、文化を含めたあらゆる多様性を考慮することは、コーチングという手法が普及するなかで避けては通れないテーマであることも確かです。
引用した論文は2010年に発表されており、それから15年を経てアジア圏でのコーチングの拡がりは目覚ましいものがあります。それに対して定量的にも定性的にも、我々の社会におけるコーチングの検証は途上にあります。類似テーマでの学術論文は、それほど多くないようです。
古い論文に突っ込みを入れすぎるより、私たち自身がコーチングをアンラーンしていくことの大切さを肝に銘じたいと思います。
(MBCCファウンダー 吉田典生)