◆開催日時:2026年3月4日 19:30-21:00

◆ナビゲート:吉田典生、山田浩史

◆参加者数:18名(申込者数:23名)

昨年は「聴き合う会」として修了生、受講生のみなさんが近況を聴き合う(語り合う)会を開催しました。今回は期の変わり目ということもあり、大きな節目となった2025年のMBCCと今後の活動について、吉田典生と山田浩史がトーク形式でお伝えする場となりました。途中で参加メンバーからの質問にもお答えしながら進めてまいりました。アーカイブをご用意できなかったので、あらためてお話した内容の要点を共有します。

1.MBCCの2025年

1-1 : 内容を拡充した入門コースの準備とスタート

2019年から準備を始め、図らずもパンデミックに見舞われた2020年春に開始したSSU(後の入門クラス)のメジャーチェンジに取り組みました。もともとSSUは基礎コースでほんらい意図している実践的な学習を無理なく行うため、しっかり基盤を身につけることを目指して導入したものです。しかし自己管理のもとで行なうオンデマンド学習への向き、不向きなど複数の要因から、内容の拡充を含め、全課程を集合形式で実施するデザインに再編しました。この再編にあたってコーチングの基盤づくりという点で目的を共有する「共感コミュニケーター講座」との統合をはかりました。

1-2 : EMCC(欧州メンタリング&コーチング評議会)の承認を得る

上記「入門コース」は、欧州を中心にアジア太平洋、北米に拠点を置くEMCCからFoundationコースとしての承認を受けました。同団体はICFと並ぶ歴史と世界規模で信頼得ているコーチング専門職とコーチング教育機関の統括団体です。今回の承認は、私たちが考えてきたコーチングの基盤とは何か、基盤を学ぶプログラムの内容とは何かについて、歴史あるEMCCのクリティカルな審査を受け、賛同を得た結果です。今後はICFとEMCC双方の承認を得た日本唯一のコーチ養成プログラムとして、下記でお伝えするようなコーチング専門職と業界を取り巻く大きな環境変化に対処していきます。

1-3 : 生成AIと共存する時代のコーチング

2025年10月に米国・カリフォルニア州サンディエゴで開催されたCONVERGE2025は、私たちの職業領域における生成AIの浸透を強く印象付けるものでした。そのなかで際立っていたのは、“この人類史レベルの革命において、私たちは人間という存在を、どう問い直すべきか”という問いであったように思います。サンディエゴのヒルトンホテルのカンファレンスフロアを貸し切って実施された数多くのセッションでは、けっきょくのところ「人間って何?」という探求が多様なトピックに入り込んでいました。

もちろん人間を問い直すということは、コーチという存在を問い直すことにつながります。世界中のコーチたちと交わす議論のなかでは、存在を脅かされることへの不安からコーチングの可能性を拡張していくことへの期待まで、さまざまな感情とアイディアが現れていました。そのなかで概ね一つのコンセンサスになりつつあるのは、テンプレートに当てはめたような定型的なコーチングは不要になる・・・ということです。ただし不要になるのは、人間による定型的なコーチングです。そのようなコーチングは既に生成AIが市場を拡げつつあります。

だからこそ人間はAIによるコーチングの特性と限界、そして倫理を管理する知識と実践能力を磨かなければならない。その上で生成AIでは難しいクライアントを取り巻く複雑な要素、人間としての中長期的な発達に関わることが期待される。また個人の繁栄に寄与するだけの存在ではなく、チームや組織、コミュニティ、社会に貢献できるコーチが求められる。サンディエゴに集ったコーチングの分野を牽引してきたトップコーチたちは、押し並べてチャレンジングな時代の到来を歓迎している印象を受けました。では私たちはどう受け止めたか。それは以下に続けたいと思います。

2.MBCC2026年の展望

2-1 : コーチングの深い世界に入門する 

ICFはコーチ人口の増加をアピールしています。直近のデータでは認定コーチが6万人を超えたとされ、グローバル調査においてもコーチング市場は大変の地域において拡大しています。しかし成長を支える企業クライアントやサービス提供に関わる企業とのコミュニケーションから、ICFが掲げるレベルのコーチングが十分に提供されているかは疑問です。欧米のコーチとの情報交換から察するに、これはけっして日本に限ったことではないと思います。また生成AIの進出と人間の新人コーチの急増が相まって、経験と実績の少ないコーチの年収は横ばいか微減です。

ただコーチが増えればいいのか。これは私のICFに対する挑戦的な問いかけです。

MBCCは『入門コース』のメジャーチェンジにあたり、パンデミック前に掲げていた原点にもどりました。

コーチングの本質に絞ったシンプルな学び。

簡単なことをさらっとやる入門ではなく、コーチングの深さを体感する学び。

コーチになることを目指す人と、コーチングを自分の職業領域で活用したい人が共にする学び。

生成AIではなく、あなたにコーチングしてほしい・・・とクライアントに言わせるコーチ。それはAIにはできないことだよねと感じさせる管理職や教師、医療従事者など。

そういうキャリア展望に立って、新しい入門コースを展開していきます。

2-2 : なんちゃってコーチングの衝撃

あることを意図して入門コースに入れたのが、“なんちゃってコーチング”のデモです。コーチングの本質をしっかり押さえるために、「それは違うよね」「ここがおかしいよね」というセッションをあえて行い、コーチングの本質を体現する共感コミュニケーションの理解につなげていく、というねらいでした。

ところが、思わぬことが起きました。受講生の大半(全員?)が、きょとんとした様子で私たちのデモを見ていたのです。そして、“さて今のセッションのどこが、なんちゃってだったでしょうか”という投げかけに戸惑っていたのです。

「それをコーチングだと習って今までやってきた(他校で)」

「今のセッション、とても機能していたように思うけど・・・」

その後、まったく同じテーマで共感コミュニケーションの基本形を実践すると、この戸惑いが解けてきました。そして、いかにも様々なスキルを学んだ気になって一時的に満足するのではなく、筋トレやストレッチ、走り込みのように地道な鍛錬を重ねることの大切さに気づきます。

この段階で基盤をつくっておくことが、コーチになっていくにせよ、コーチングを他の仕事に組み込んでいくにせよ、欠かせないプロセスだと確信しています。

2-3 : コーチングを再定義する時代へ

以下はHome Coming では触れませんでしたが、最後にお伝えしたい内容と繋がるので、先に共有します。ウェブサイトに掲載しているメッセージです。

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コーチングを新たに定義しよう。

世界は持続可能性を失う危険性を高めながら、ますます混沌としていく

気候危機と人々の分断が社会を覆うなか、生成AIが人間の存在を問い直そうとしている。

これからもコーチングが人の可能性を解き放つ支援であるために、私たちは学んできたことを大切にしながら、誰も教えてくれないことを共に探求していきたい。

コーチングを必要とする人が、いつでも手軽にアクセスできる社会をつくる。

未来にとって私たちが、「良き祖先」であるためのリーダーシップを実践する。

個人や組織の成功を超えた、社会システムとしての勝利をつかむ。

対話で紡ぐ叡智が世界を変えることを信じて。

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2:4 世界標準の倫理教育

私たちの業界における世界的な潮流として、現在の社会の在り方のなかで機能するコーチングで良いのか? という大きな問いが芽生えています。ICFやEMCCのようなコーチングの専門機関や、彼らによる国際連携SCC(The Sustainability Coaching Coalition )、私が日本チームの共同代表を務めているClimate Coaching Alliance(CCA)など、コーチという存在、プロフェッショナルコーチングという職能が、まったく新しい世界に視野を広げようとしていることを、私自身は誇らしく思っています。

そのような経緯と時代背景から、コーチングにおける倫理というものが極めて重要な学習、そして専門家としての信認の柱になってきています。MBCCではコーチやメンターに向けた最先端の倫理教育を提供するEthics Forum International(EFi)と連携し、EFiが提供する『コーチング倫理フォーラム』における日本のコーチの学習機会(国際基準に沿って日本語で倫理の実践を学ぶ機会)をつくります。これは世界各地域におけるコーチング倫理教育と連動した継続的な取り組みになります。参加は無料、志の高さは無限、どこでコーチングを学んだか、認定の有無は無関係です。

以上、まだ書き足りてないことはありますが、まずはここまでとします。これからも、それぞれの歩幅とスピードを尊重し、それぞれの多様な未来に耳を傾けながら、いつでも戻りたいときに戻ってくることのできるベースキャンプをめざします。

Coaching Mind, Beginner’s Mind

吉田典生

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