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リフレクションをコーチング学習に活かす~トレーナー達のリアル実践法を大公開~

今村佳未 投稿者:今村佳未 カテゴリー:コラムコーチング

リフレクションをコーチング学習に活かす~トレーナー達のリアル実践法を大公開~

前回のコラム「 コーチング学習に欠かせないリフレクションの習慣 」では、リフレクションがいかに成長の鍵となるのかについて、お伝えいたしました。本コラムでは、その続編として、MBCC®ファウンダーの吉田典生、そしてMBCC®のトレーナーやコーチ達が実際に取り入れているリフレクションの様子を大公開します。

さらに、自分自身のリフレクションについて、どんな方法で習慣化していくのか。より具体的に考えるための設問も用意しておりますので是非ご活用ください。

自分の可能性をフルに活用できたら、やり遂げられることの多さに驚かされるでしょう(トーマス・エジソン、アメリカの発明家・起業家)

If we all did the things we are capable of doing, we would literally astound ourselves. Thomas Edison

マインドフルネスでリフレクション効果を高める

マインドフルネスでリフレクション効果を高める

リフレクション効果を高める為に忘れてならないのがマインドフルネスです。

特に、一人でリフレクションを行う際に壁となるのが自分自身の考え方の癖や思い込みなどのバイアスです。いかに心を落ち着け、フラットな気持ちで、評価判断を手放し自分自身にアクセスしていけるのかで、リフレクションの質が大きく変わります。ここでは、リフレクションの効果を高めてくれるマインドフルネスについて少し触れておきます。

マインドフルネスは、自分自身と自分の経験と仲良くなる方法です(ジョン・カバット・ジン、マサチューセッツ大学マインドフルネスセンター創設所長・分子生物学博士)
Mindfulness is a way of befriending ourselves and our experience.
Jon Kabat-Zinn

 

マインドフルネスとは、現在の経験を意識的にバランスよく受け入れることです。(シルヴィア・ブーアスタイン、作家・心理療法士、・仏教教師)
Mindfulness is the aware, balanced acceptance of the present experience.
Sylvia Boorstein

「感情」は今の自分を知る最大のツール

「感情」は今の自分を知る最大のツール

私達の誰もがもつ「感情」は、本当の「自分」を探る大きな手がかりとなります。どんな時にポジティブになるのか、ネガティブになるのか。そして、その理由にはどんな信念や価値観が紐づいているのかを探求していくと、自分自身を客観的に振り返るためのデータが蓄積されます。それは、自己認識力が高まることにもリンクしますので、リフレクションにおいては大切な要素の一つと言えます。

「マインドフルネス」は感情と向き合う土台となる

しかし、強い感情が沸き起こると、冷静さを失い、リフレクションどころではなくなってしまうことの方が多いかもしれません。皆さんも、そんな瞬間を思い出せるのではないでしょうか?もちろん、私もそんな経験が沢山あります。

例えば「怒り」の感情が起こった際、必要以上に「怒り」が肥大化し、後になって自分の言動が大袈裟だったことに気づくこともあります。感情に支配されている間は、「怒り」や「自分」について客観的にリフレクションするのは非常に難しいものです。

 そこで、マインドフルネスを活用し、ありのままの感情に客観的に向き合うことがとても重要になります。「怒りの感情=私」であった感覚が「怒りの感情」と「自分」の間にスペースをあけて別物として考えることができる状態とも言えます。

マインドフルネスの筋肉を鍛えることで、自分の感情を客観視することや、感情について振り返ることが可能になり、より望ましい行動の「選択」や、「成長のチャンス」を見出すことができるようになります。

「驚き」「フラストレーション」「失敗」が起こった時に備えるには

前回のコラムで、「驚き」「フラストレーション」「失敗」が起こった時が成長の為のリフレクションの瞬間であることを紹介しました。しかし、そうは言われても、感情にコントロールされてしまいがちなのが人間の性(サガ)でもあります。これらの瞬間に、マインドフルな状態になる為には、どんな時でもマインドフルネスを発動できる筋力が必要です。

長い時間である必要はありません。ちょっとしたネガティブな気持ちの起こった瞬間に、マインドフルな状態で自分を観察していく癖をつけていくと、少しずつマインドフルネスの筋力がついていきます。(マインドフルネスの実践については、マインドフルネスの実践者に聞いた「習慣化」のコツ もご参考にしてください。)

MBCCトレーナー達の「リフレクション」大公開

MBCCトレーナー達の「リフレクション」大公開

コーチングやマインドフルネスに長年携わるMBCC®ファウンダーの吉田典生、そしてMBCC®のトレーナーやコーチ達はどんなリフレクションをしているのでしょうか?

実践のリアルな様子を聞いてみました。コーチやトレーナー達の実践方法も様々ですので、自分に合ったリフレクションを探すヒントを見出して頂けるのではないでしょうか。

以下、今回の回答者です。(経歴等はMBCC® のホームページ会社概要 にも掲載しております。)

吉田典生、MBCC®ファウンダー、エムビーシーシー合同会社 CEOMCC

松川美保、エムビーシーシー合同会社COO、シニアトレーナー、シニアコーチ、PCC

山田浩史、MBCC®シニアトレーナー、シニアコーチ、外資系IT企業の管理職、MCC

関口詩乃、MBCC®シニアトレーナー、シニアコーチ、北海道大学薬学部非常勤講師、PCC

 

質問1:どんなタイミングでリフレクション(振り返り・内省)を取り入れていますか?

<吉田典生の回答>

  • コーチングセッション終了後にログを取り気になったことをチェック(ごく短時間の場合もあるが必ずここまでをコーチングの予定として確保している)
  • 概ね季節ごとにメンタル、スピリチュアル領域の内省や洞察で長年お世話になっている方にセッションをしてもらう(コーチング業務に関するリフレクションはその一部)
  • コーチングを受ける際に必然的にリフレクションが入ってくる
  • リアル業務の帰りに車を運転している時間(オンとオフをつなぐ絶好のバウンダリーとなっている)

<関口詩乃の回答>

  • 概ね2週間に1回、コーチングセッションとカウンセリングを受けている
  • 毎朝、前日の行動を手帳に記録するとともに前日の日記をつけている(毎朝、それらの時間をスケジュールしている)
  • 1回、11月後半に今年を振り返り来年を考える一人合宿をしている
  • (コーチとして)毎回、コーチングセッション終了後にログ・メモを作成しながらセッションについての振り返りを行っている
  • (トレーナーとして)気になることがあるときには、終了後、メモを取っておく。実施翌朝に、実施した際の気づいたことや受講者の反応、改善できそうなことなどを振り返りメモする時間を取っている。
  • (クライアントとして)セッション終了後に何を話して何を決めたかなどの簡単なログを取る(セッション中は話に集中していることが多いため)
  • セミナー等の受講時は、受講後概ね3日以内に、当日取ったメモを含めテキスト等を読み直し、必要に応じて違う色のペンで追記を行っている

 

質問2:どんなリフレクションを取り入れていますか?方法について教えてください

<松川美保の回答>

  • コーチングセッションやイベント、ワークショップでは最後に静かな時間をとる
  • ジャーナリング
  • コーチングセッション(自分のコーチとのセッションを利用)
  • 自然の中に身を置く(五感の活用)
  • 中立で信頼できる人からフィードバックをもらう
  • 瞑想
  • フレームワークの活用
  • 鏡をみる
  • こういう時にはこんな問いを自分にしてみる、というものを持っておく

<吉田典生の回答>

  • 記述と対話、コーチング、スーパービジョン、ドライブしながらの心の会話
  • 加えて、瞑想中に自然に浮かび上がってくることは結果的にリフレクションにつながっている

 

質問3:リフレクションの効果について教えてください。リフレクションにより、どんな効果を実感されていますか?

<山田浩史の回答>

  • 自らのコーチングの癖や無意識に持っている信条・価値観が客観的に観察できる

<吉田典生の回答>

  • 過去をふりかえるイメージがあるけれど、現在地が見えてくると思う。内省(少し時間を巻き戻して観察)・・・まいた種 ⇒ 気づき(現在にもどる)・・・結果。
  • 違和感やモヤモヤその他の心地よくない感情を駆動力に変える契機(但し、まず違和感とともにいることが大切。違和感を払いのけようとするのではなく)

<松川美保の回答>

  • 理解が促進され学びが深まり次のアクションの選択肢が増える
  • 言語化しにくいものを表現できるようになっている
  • 視野が広がり可能性が増えている
  • リフレクションする度に新しい発見、異なる気づきがある
  • 結論づけず、継続的に取り組むことができるようになってきた(持続性、持久力)
  • 自分の中に意図的にスペースを作ることができ、そのスペースに留まり、先を急がずしばらく保留し、よりよいタイミングを待つことができるようになっている
  • 取捨選択、優先順位付けが少し楽にできるようになった
  • 自分の無理のない動き方がわかるようになってきた
  • 自分以外の周囲へ注意を向ける余裕が増え、思いやりを行動で示せるようになってきた
  • 相手との共有領域が広がり、よりよい意思疎通や関係構築に寄与している
  • 本当に大切なもの、本質的なものに目を向ける頻度が多くなってきている
  • 自分の癖やパターンに気づき、軌道修正や違う試みを選択する機会が増えている

 

質問4:リフレクションを「コーチとしての成長」に役立てる際のアドバイスをお願いします。

<吉田典生の回答>

  • やり方を問うよりも習慣にすること
  • 具体的にふりかえり、概念化し、具体的な行動につなげる・・・というサイクルをまわす

<松川美保の回答>

  • 日頃、何気なくふりかえることは誰もがしていると思います。意図をもって何が起こるのだろう、そこに何があるのだろうという好奇心とともに自分なりにいろいろ試してみる。そしてやってみて得られたこと、体感したことを惜しみなく共有したりコーチングに取り入れ楽しんでみたり、試し続けてみると何が起こるのか・・・Enjoy!

<関口詩乃の回答>

  • 出来なかったことを探すのではなく、何が起きていたのかに意識を向けると、反省会ではなくリフレクションになるような気がしますし、その方が行動変容に繋がりやすいと感じます。

 

質問5:その他、リフレクションに関して、伝えたいことがあればご自由に記載してください。

<山田浩史の回答>

  • リフレクションを受け止めたり、取り込もうとする際の自分自身のバイアスがかかってないかを意識する。聴きやすい情報は入れるけれど、避けたい情報は受け入れてないか、どうか。

 <関口詩乃の回答>

  • リフレクションも続けることが力になると考えているので、ご自身が気分よく、そんなに労力を割かなくても続けられる方法やタイミングを探すといいんじゃないかな、と思います。

 <吉田典生の回答>

  • 内省は省察、洞察、省察的内省などいろいろな言葉で表現されます。同じことを言っている場合もあれば、異なる意味で使われている場合もあります。私が思う大事なポイントは、単に過去を振り返って反省するのではなく、考え方の枠組みを転換して新たな視点を獲得していく姿勢をもつこと。あらかじめ決めていた「正解」に当てはめて、あそこがダメだった、ここができなかったというのではなく、問題設定を問い直す姿勢をもつこと。固定化された「正解」を解きほぐせない人の内省は堂々巡りの反芻につながりやすく、ターシャ・ユーリックなど研究者が警鐘を鳴らしています。

リフレクションを最大限活かすための戦略

リフレクションを最大限活かすための戦略

コーチやトレーナー達のリフレクションの実践の様子を知り、どんなことを感じましたか?

また、どんな所が参考になったでしょうか?

折角リフレクションについて色々と知識も増え、実践者の様子を知ることができましたので、ここからは自分がどうリフレクションを取り入れるのかについて、考えておきませんか?

下記に、いくつかの「問い」を用意してあります。自分の考えや思いを是非、言語化してみてください。既にリフレクションを取り入れている方はバージョンアップできるポイントが見つかるかもしれません。

  1. どんな場面でリフレクションを取り入れると、あなたにとって効果的だと思いますか?
  2. 1の各場面で、どんなリフレクションを試してみたいですか?
  3. 既にリフレクションを取り入れている方にお伺いします。現在のリフレクションをさらに効果的にできそうな方法はどんなことでしょうか?
  4. リフレクションを継続的に行うには、どうしたら良さそうですか?
  5. リフレクションの効果は、どうやって確認しますか?

 

リフレクションの実践で、どんな未来を創造したいのか

リフレクションの実践で、どんな未来を創造したいのか

前回のコラムから、2回に渡りリフレクションについての内容でしたが、いかがでしたでしょうか?

リフレクションの基本的な意味や役割、そしていかに実践していくかに焦点を充てて紹介させて頂きました。しかし、リフレクションは、人材育成、組織開発など、多くの分野で今だ研究中でもあり、今後、ますます解明されていく領域だと考えます。

そう考えると、リフレクションの実践は固定的に行うものではなく、リフレクションの実践方法自体もリフレクションしてバージョンアップしていくことが必要なのでしょう。

そして、リフレクションにより自分の持てる力を最大限引き出した時、自分はどんな姿なのか。

経験を学習に、学習を智慧やアクションに変換し続けることで、どんな未来を創造していきたいですか?

 

MBCCリサーチ担当 今村佳未

 

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