コーチングとは
クライアントがより良く生きるためのセルフマネジメントを継続的に支援する対話と、それを支える関係性。
あるいは相手の強みや可能性を引き出すために、本人の自己理解を促進し、本人が望ましい状態を実現していく自己管理を、継続的に支援する対話。またそれを支える互いの関係性です。
※下記の学術論文での定義を参考に、MBCCファウンダーの吉田典生がまとめたもの。
コーチングの本質とは何か - 書籍を契機とした本質観取の実践と方法 『支援対話研究』 第8号(西條剛夫 早稲田大学大学院客員准教授、エッセンシャル・マネジメント・スクール創設者)
指導者やコンサルタントとして知識、ノウハウなどを提供するのではなく、コーチングを受けるクライアント自身が内省し、自ら気づき、主体的に行動を起こしていくプロセスを重視します。
コーチはこうしたプロセス創出の専門家であり、コーチング技法とは、こうしたプロセスを生み出していく対話のテクノロジーです。
コーチングに携わるコーチとは、「質問」「傾聴」「承認」などをはじめとしたコーチング独自の数多くの対話スキルを駆使し、クライアントの思考を枠を広げ答えの探求を促すための関わり方を備えています。
これらの能力を学ぶためには、専門書籍を購読し個人で学習することやコーチ養成スクールを受講して学ぶ場合など様々な学び方が存在しています。
コーチングを学ぶことにより、新しいスキルを身に着けることができます。これは対人コミュニケーションに関連する様々なシーンで役立つことが期待できるでしょう。
ところが、これらの新しいスキルを知ったことによって、コーチ自身が そのスキルを活用することに拘ってしまうことがあります。
例えば、コーチとしての過去の成功体験から、学んだスキルを使うことで クライアントに対して好結果が生まれることを期待してしまう場合があります。
ですがコーチが良かれと思ってクライアントに対して使ったスキルが、時にクライアントにとって対話がかみ合わないことがあっても不思議ではありません。
なぜならクライアントも人それぞれ異なる思考を持ちその時々の状況によっても受け止め方が変わることもあるからです。
しかし、この状況に気づくことができず、コーチングがうまく進まないことから焦りや困惑がコーチ自身も自覚しないまま焦りや困惑に繋がり「もっと良い質問をしよう」「もっと違う技法で関わろう」というようになり更にスキルを乱発してしまうことも起こりえてしまいます。
この状況が悪い方向に向かうと双方の関係性の悪化、話す内容が迷走し混乱を招く結果にもなりかねません。そのためコーチには、学んだ数多くのスキルをただ使うのではなくその時の状況に応じて適切なスキルを選択する判断力が求められます。
マインドフルネスとは
マインドフルネスとは「今この瞬間に注意を留めること、それによって生まれてくる明晰な気づきの状態」を表します。
人間の活動のすべてにおいて、今この瞬間にどれほどの注意が維持されているかは、物事の認識を大きく左右します。
注意は人と周囲の世界をつなぎ、経験に意味を与える。
そして人間の認識を裏付け、思考や感情を随意に提供するためのメカニズムを提供する。注意力の使い方次第で、世界の見え方が違ってくる。
アン・トレイズマン(認知心理学者・アメリカ国家科学賞受賞者 行動・社会科学部門)
コーチングや、あらゆるコミュニケーションの場面でも、マインドフルネスの質(注意がクリアであるかどうか)が、感情や思考に大きな影響を与えます。
たとえば、相手の言動についカッとなる。思わぬ話題を持ち出されて混乱してしまう・・・。こんなとき、身体レベルから現れてくる自分の反応に注意が向けられていると、それが自分なのではなく一時的な「現象」として認識できます。そこから建設的な関わり方のための自己管理力が生まれてきます。
神経科学の研究によると、明晰な気づきをもたらす注意の安定化は、マインドフルネス瞑想などを通して脳の構造レベル、機能レベルにおいて促進、開発できると言われています。
マインドフルコーチングとは
MBCCは注意という人間にとって究極のメタスキルを重視し、注意の科学と東洋の伝統(禅やテーラワーダ仏教などの流れを汲むマインドフルネス)を統合しています。
対話技法としてのコーチングの可能性を最大化する鍵は、コーチングの実践者であるコーチの在り方・状態、コーチングを受けるクライアントの在り方・状態、そして二人の関係性です。
MBCCにおけるマインドフルコーチングの核は、コーチ自身の自己認識力と自己管理力を、マインドフルネスを通して培い、コーチングの基盤としていることです。
コーチの自己認識力と自己管理力がクライアントの状態にも影響を与え、クライアントのマインドフルネス(言い換えればオープンな心で内省し、大切なことを探究するコンディション)を生み出すことを助けます。
コーチとクライアントのマインドフルネスな関係性が、さまざまなコーチング技法を状況に応じて最適化し、必要な実践をすること、不必要なスキルは手放すことにつながります。
MBCCのマインドフルコーチングの究極においては、コーチが「コーチングをする」というモードが消え、コーチとクライアントの間で「コーチングが起きる」状態が現れてきます。