フィードバックの極意を伝授!ビジネスに効果的な4ステップ
「あなたのフィードバックは相手の成長に役立っていますか?」
この質問に自信を持って「YES!」と答えるために、すぐに実践できる方法があります。
フィードバックの重要性
なんと紀元前500年という大昔に、孔子でさえ言いづらいことを上手に伝えるスキルがいかに重要かを語っていたとは驚きです。
職場におけるフィードバックとは、「業務や行動における評価や結果を伝えること」ですが、その目的は「より良い行動」を生むためのものです。
自分の考え方や価値観だけでは分からないことや見落としていること、まだ見えていないことをフィードバックにより気づくことで、行動を変え改善していく。人が成長することで企業もまた成長していくことが理想です。
多様性や異なる価値観がますます重要視される中、他者からのフィードバックは必要不可欠なコミュニケーションの一つになっています。
今回ご紹介するTed Talk (The secret to giving great feedback) のスピーカー、LeeAnn Renninger (リーアン・レニンガー)によると、ギャラップ調査(米国ギャラップ社による大規模かつ信頼性のある世論調査)では会社員のうちわずか26%しか職場で受けたフィードバックのおかげで仕事が改善したとは思っていないそうです。
職場でのフィードバックの目的は人材育成や組織開発であるにもかかわらず、時間も労力もかけたフィードバックが活きていない。それは何故でしょうか?
フィードバックの失敗パターン
多くの人のフィードバック方法は人間の「脳」と相性が悪く、主に二つの失敗タイプに分かれます。
- 非常に遠回しな言い方になり、聞き手の脳がフィードバックを受けたことにも気づかないか、混乱している。
- 遠慮が無さ過ぎて、聞き手の脳は自己防衛体勢に入りフィードバックを受け入れることが出来ない。
脳には扁桃体という部分があり、受け取る情報に目を光らせ社会的な脅威が含まれているかを判断しています。
その判断により自己防衛したり逃避したりするのです。フィードバックする側も調子を崩して言いよどんだり正当化を始めたりすることで、あっという間に二者の間がギクシャクしてしまいます。
リーアンは、世界中の革新的な企業のマネージャーとチームをトレーニングする会社、Life Labs Learningの創設者でもあります。彼女はチームとともに様々な企業を回り「フィードバックの達人」と呼ばれる人達を集め研究しました。そして、その極意をシンプルに4つのステップで紹介しています。
フィードバックの極意4ステップ
1.「小さなイエス」(”THE MICRO-YES”)
フィードバックを始める準備として小さな「YES」を得る。その2つの役割は・・・
- 受け手の脳に「フィードバック」が来ることを知らせ、やりとりのスペースをつくる
- どちらを選ぶも自分次第のYESかNOの2択の質問によりフィードバックの受け入れ態勢を作る
例:小さなイエスを得るための声掛け
「さっきの対応の件なのだけど、5分だけ時間ある?」
「業務改善のアイデアがありますが聞いてもらえますか?」
2.「具体的な証拠を示す」(”DATA POINT”)
具体的に何を見たのか、聞いたのかを伝える。客観的でない言葉は一切省く。
聞き手によって違う意味に取れる「ぼかし言葉」は具体性に欠けるので使わない。ぼかし言葉だと受け手は何をすべきかが分からず行動を改善できない。良い行動を定着させようがなくなる。
×ぼかし言葉の例:「君は当てにならないよ」
〇具体的な証拠の例:「例のメール11時までに送ってくれる話だったけど、まだ来てないよ」
3.「影響を伝える」(”SHOW IMPACT”)
2で具体的に述べた事が、どう影響したかを説明する。すると先に出した証拠に目的・意味・理屈が加わって脳が求める情報が出来上がる。これはフィードバックの内容がネガティブであってもポジティブであっても同じメカニズム。
例:「メールを待っている間、仕事が止まって先に進めなかった」(ネガティブフィードバック)
「ストーリーの足し方がとてもよかったと思う。おかげでコンセプトを、すっと理解できたよ」(ポジティブフィードバック)
4.「質問で終える」(”END ON A QUESTION”)
最後を質問で締めくくると、従うのではなく責任を持って関わろうとする姿勢が生まれる。また、こちらが一方的にダラダラ話すことは無くなり、協力して問題を解決するための対話が始まる。
例:「ここまで聞いて、どう思いますか?」
「私はこうすると良さそうな気がしますが、意見をもらえますか?」
「フィードバック×コーチング」でリーダーシップを発揮!
フィードバックはコーチングにおいても重要なスキルです。またリーアンが話している4つ目の極意「質問で終える」からスタートする対話には、コーチングにおける質問のスキルがとても役立ちます。
どんなに良いフィードバックも受け手の成長に繋がらなければ意味がありません。特に部下や組織の成長を促す管理職や経営者の立場であれば、この対話の影響力がリーダーシップ力の一つとなります。
必ずしも時間を長くかける必要はありません。「フィードバック」から「より良い行動」に繋げるための対話のスタートでは、4の「質問」から受け手の気持ちやコメントをしっかりと傾聴しましょう。
傾聴する際は、受け手の意見について良し悪しの判断を一旦手放し聴くことが大切です。その上で、何が次のゴール(目標)として相応しいかを対話を通して決めていきます。
ゴールは具体的な程、取り組みやすいでしょう。そして、決めたゴール(目標)の進捗状況を確認する日時(チェックイン)を決め、チェックインまでに必要なサポートがあれば確認しておくことも成長に繋げる鍵となります。
多忙なビジネスの現場であっても、フィードバックが過去のものになってしまう前に、ここまでの一連の対話をしておくことが重要です。
私自身、初めて部下をもった時、上手くフィードバックから成長に繋げる対話が出来ずに苦労していました。その後、MBCCにて初めてコーチングを学び始めました。傾聴・共感・質問・ゴール設定などのコーチングの基礎練習とマインドフルネス・瞑想を重ね、同時にビジネスの現場で実践することで随分とスムーズにフィードバックや1on1 などが出来るようになりました。そして、コーチングのスキルはリーダーでなくても、自らの成長や対人スキルとしてもっと早く学んでおきたかったことの一つだったと痛感したことを覚えています。
「プッシュ型」フィードバックと「プル型」フィードバック
リーアンは、4つの極意に加えて、フィードバックの達人は自らフィードバックを求めている「プル(引く)型」と補足しています。
フィードバックが与えられるのを待っている「プッシュ型」よりも、「プル型」のフィードバックの達人は伝え方が上手なだけではなく自分へのフィードバックを定期的に求める「学び続ける人」という良い定評もうまれ影響力にプラスになっているそうです。
フィードバックを効果的にするため
企業や組織内でフィードバックの効果を最大化する為に、「フィードバック」 についての共通認識を作っておくことは土台作りとして大変重要です。
フィードバックの目的や方法(4つのステップ)、成長に繋げる対話やゴール設定など、一通りの流れや目的について同じ理解を持つことでフィードバックの質が上がります。
そしてフィードバックを与える側も受けとる側も、それぞれの役割でより高い当事者意識を持ち関わることで、その効果は一層高まり成長の階段を確実に上っていくことができるでしょう。
MBCCリサーチ担当 今村佳未