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心理学から学ぶコーチング~本音を聴き出せる人の特徴~

今村佳未 投稿者:今村佳未 カテゴリー:コラムコーチング

心理学から学ぶコーチング~本音を聴き出せる人の特徴~

「あの人」の前だと、ついつい自分のことを沢山話してしまう・・・

「あの人」と一緒だと何でも話しやすい・・・

「あの人」になら聞いてもらいたい・・・

 あなたにとっての何でも話せる「あの人」はどんな方ですか?

(この先を読み進める前に、あなたにとっての「あの人」の特徴を「言葉」にしてみてください。)

「あっという間に相手の心を開く人」=心理学の「オープナー」

「あっという間に相手の心を開く人」=心理学の「オープナー」

あっという間に相手の心を開いてしまう。

そんな人のことを心理学では「オープナー」(opener)と呼ぶそうです。

コーチやリーダーであれば、クライアントや部下が本音で話せる存在であることは、信頼関係を築き、円滑なコミュニケーションをしていくためにとても重要です。

逆にオープナーとしてのスキルが低いと、どんなに他のことを頑張っても相手の本音が引き出せず、空回りしてしまう危険性が高まります。

オープナーの特徴や傾向は、コーチに求められるスキルと非常に近いものがあります。

そこで、オープナーとはどんな人で、オープナーとしてのスキルはどんなことで高めていけるのか。そんな視点で考えてみると、あなたにとっての「あの人」からも学ぶことができそうですね。

また、オープナーからの「学び」は、普段の生活や仕事でのコミュニケーションで充分実践できます。日常で身に付いたスキルであれば、コーチングの場面でも自然と発揮されることは想像がつくのではないでしょうか。

では、今日からどんなことに心掛けていくと良さそうか?

研究や文献を参考に考えたいと思います。

オープナーの特徴は?

オープナーの特徴は?

Psychology Today(メンタル ヘルスと行動科学に関する世界最大のオンライン サイト)の記事 5 Ways to Get People to Open Up to You (人に心を開いてもらうための5つの方法) (以下「5つの方法)にオープナーの研究から分かった「特徴」について下記のように記載がされています。

➀自己認識力が高い(“openers were self-aware”

②人と一緒にいるのが好き・・・つまり「人が好き」(“comfortable around people, that they generally liked people”)

③異なる視点を取り入れるのが上手(“high in perspective-taking”)

 

また、オープナーであるかの指標を下記のようなリストにし、このような傾向が高い場合はオープナーとしてのスキルが高い可能性のあることが紹介されています。

 

  1. 人はよく自分のことを私に話してくれます。(People frequently tell me about themselves.)
  2. 私は聞き上手だと言われることがあります。(I’ve been told that I’m a good listener.)
  3. 私は他の人を受け入れることが得意です。(I’m very accepting of others.)
  4. 人は私に秘密を打ち明けてくれます。(People trust me with their secrets.)
  5. 私は簡単に人の“心を開く”ことができます。(I easily get people to “open up.”)
  6. 私の周りにいる人はリラックスできます。(People feel relaxed around me.)
  7. 私は人の話を聞くのが好きです。(I enjoy listening to people.)
  8. 私は人の悩みに共感します。(I’m sympathetic to people’s problems.)
  9. 私は、人が自分の気持ちを伝えることを大切にします。(I encourage people to tell me how they are feeling. )
  10. 私の前では人は自分自身について話し続けます。(I can keep people talking about themselves.)

 

上記のリストに沢山該当すれば、オープナーの可能性が高いそうです。

しかし、該当しない項目もあれば、該当するか自信の無い項目も当然あります。オープナーのスキルは、「全く無い人」も「完璧にある人」も存在しないでしょう。

ここで大切なことは、オープナーとしての自分の現在地を認識し、意識的にオープナーとしてのスキルを上げていく行動を実践することだと考えます。

 

すぐに実践できるオープナーになるための 5 つの方法

すぐに実践できるオープナーになるための 5 つの方法

では日頃からどんな取り組みをすれば、オープナーとしてのスキルを上げていくことができるのでしょうか?「5つの方法」で紹介されているアプローチを確認していきましょう。

➀ 相手の話に充分に耳を傾ける

細心の注意を向けて下さい。

 

(原文 “Listen fully to others. Give them your undivided attention.”)

 

MBCCでマインドフルコーチング®を学んだ方なら、知識としても体感覚としても、この価値を既にご理解されていることだと思います。一般的な言葉では、「傾聴」や「アクティブリスニング」という言葉で表現され、「耳」だけではなく、「目」と「心」でも相手の話をじっくり最後まで「聴く」姿勢やスキルのことになります。

 

簡単そうですが、日常のコミュニケーションでは「相手の話にだけ集中できている」状態はなかなかありません。目の前の相手が話していても他のことを考えていたり、相手の話をさえぎったり、ただ聞いているだけで「注意」は払えていない、そんなことの方が多いのではないでしょうか。

 

優れたリスナーになるために「実践」できることは?

日常の中で「注意深く相手の話を聴く」ことを実践していくために、参考になりそうな二つのコンテンツをご紹介します。

 

  • 一つ目は、5分程のアニメーション動画 4 things all great listeners know” (「優れたリスナーが知っている4つのこと」, TED-Edチャンネル) です。優れたリスナーになる為の重要なポイントが大変分かりやすく5分の動画に盛り込まれています。

※オリジナルは英語ですが、設定で「日本語」字幕に変更できます。(「設定」→「字幕」→「日本語」)

 

 

「傾聴」や「聴く力」などでネット検索すれば関連書籍や記事は沢山存在します。

「聴く力」の知識を得るためにコンテンツに不自由することは無いでしょう。

しかし、コミュニケーションにおけるスキルアップに一番重要なのはやはり実践です。1日たとえ10分でも、細心の注意を向けて話を聴いてみることから始めてみるのはどうでしょうか?

身近な場面で「注意深いリスニング」を「実践」すると、どんなことが変わるのか?コミュニケーションの相手を観察してみるのと同時に、自分自身も観察してみてください。変化や効果を実感できる時がきっとあると思います。

 

② 共感を表す

共感を表す

他の人が話している時は、自分の気持ちや好みを考えるのではなく、その人がどんな経験をしているのかを考えてみましょう。例えば、友達が駐車違反の切符を切られて腹を立てていと話したら、「それは大したことではないよ。誰にでも起こることだから。」と言いたくなるかもしれません。しかし、そのかわりに、友達の気持ちに理解を表すことができます。「わあ、残念。切符を切られるのは、とても悔しいよね。」のように。

 

(原文 “Express empathy. When others share, instead of thinking about your own feelings and preferences in response, think about what it’s like for them to have their experience. For example, if a friend shares that they’re upset about getting a parking ticket, you might want to say, “That’s not such a big deal. Happens to everyone.” But instead, you could share your understanding of how they’re feeling: “Wow! What a bummer. Getting tickets is so frustrating.” )

 

駐車違反の切符の例は、とても分かりやすいですね。

日頃の会話で、自分がどんな言葉を発しているのか。振り返ってみると、「共感」とは言えない言葉がいかに多いかと思うことがあります。無意識的に使っている言葉であれば、それを認識することがファーストステップです。そして、共感を表すのにはどんな言葉を使えばいいのか考えてみる。やはりこれも「注意」と「実践」の繰り返しで、少しずつ高まるスキルなのでしょう。

 

“私たちは耳を傾けていると思っていますが、真の理解と真の共感をもって耳を傾けることはめったにありません。しかし、この非常に特別な種類のリスニングは、私が知っている変化のための最も強力な力の一つです。”  カール・ロジャーズ, アメリカの心理学者

 

We think we listen, but very rarely do we listen with real understanding, true empathy. Yet listening, of this very special kind, is one of the most potent forces for change that I know.  Carl Rogers

 

③自己認識を養う

他の人の考えや感情を理解するのに役立つように、自分がどのように考え、どのように感じているかを振り返ってください。

 

(原文 “Cultivate self-awareness. Reflect on how you’re thinking and feeling to help you understand others’ thoughts and feelings.”)

 

自己認識力」というキーワードは、リーダーシップや人材開発などの場面でも良く聞く言葉ですが、コーチングにおいてもメタスキルの一つで自分自身や他者との関わりの中で大変重要な役割を担っています。

 

「自分が考える自分の能力」と「実際の自分の能力」とのギャップ。

「自分が考える他者からの評価・印象」と「実際に他者が考える自分の評価・印象」とのギャップ。

この二つのギャップが小さい程、自己認識力が高いと言えます。

 

自己認識力を高めていく方法についても書籍やコンテンツは沢山存在しますが、「メタスキルとしての自己認識(セルフ・アウェアネス)」(典生人語 より)の中でも5つのポイントが紹介されています。どんな方法なのかを確認されたら、今の自分に一番必要だと感じるものから取り入れてみるのはどうでしょうか。

 

④オープンクエッションで尋ねる:

誰かがストーリーを共有したら、次のような質問をしてください。「それはあなたにとってどのようなものでしたか?」や 「それについてどう思いましたか?」

 

(原文 “Ask people open questions. When someone shares a story, follow up with questions like: “What was that like for you?” and “How did you feel about that?”)

 

Yes」か「No」で答えられる質問を「クローズドクエッション」というのに対し、回答形式が制限されず自由に回答できる質問を「オープンクエッション」と言います。回答形式が決まっていないため、返答の自由度が広がることで、より相手の考えや気持ちを引き出しやすくなります。

 

⑤人の話を聞く喜びを見つける

相手の話を聴くことで親密さが築かれます。また、あなたを信頼しているからこそ相手が自己開示しているので、それは喜ばしいことなのです。

 

(原文 Find the joy in listening to people. Listening to others builds intimacy. It’s also flattering when others self-disclose to you because it shows that they trust you.”)

 

逆の立場で、自分が話し手になる状況を想像すると分かりやすいかもしれません。

自分や自分の話している内容に対して、相手が関心を示さずただ聞いている場合と、興味や好奇心を持ってくれていることが分かるように聞いている場合。

前者と後者では、話しやすさや話す心地良さは全く異なるものになりませんか?

 

“オープナー”になれたら変わることは?

“オープナー”になれたら変わることは?

さて、あなたがオープナーのスキルを高め、あなたにとっての「あの人」のように、あっという間に相手の心を開く「オープナー」になれたとしたら・・・

 あなたの周りにいる人はリラックスして、あなたに自分の事や秘密までも自然と話す。あなたはそこで喜びを感じながら興味を持って聴いている。

それは、どんなコミュニケーションなのでしょうか?そして、あなたが提供するコーチングには、どんな変化が出てきそうですか?

MBCCリサーチ担当 今村佳未

 

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<参考文献>